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1. 夫が逮捕されたらするべきこと
「夫が逮捕された」と連絡を受けた場合は、以下のポイントに留意しながら行動してください。
まずは冷静になる
【重要】弁護士に接見を依頼して状況を確認してもらう
夫の勤務先に連絡するべきか検討する
子どもや家族に話すかは年齢に合わせて決める
弁護士を通じて被害者と示談交渉をする
1-1. まずは冷静になる
ある日突然、警察から「ご主人を逮捕しました」という連絡を受けた場合、信じられない気持ちでパニックになるのは当然でしょう。
そのような連絡を受けた際には、まずは深呼吸をするなどして焦る気持ちを落ち着け、冷静になるよう心がけましょう。
逮捕後の刑事手続きは、厳格な時間制限との戦いの側面があります。パニック状態のまま職場に連絡するなどの行動を起こすと、かえって取り返しのつかない事態になる可能性があります。
1-2. 【重要】弁護士に接見を依頼して状況を確認してもらう
警察から逮捕の連絡を受けた直後、妻自身がいきなり夫のいる警察署に行ったとしても、夫との面会はできません。まずは、1回限りで無料で呼べる「当番弁護士」を利用するか、本人や家族が自由に選んで委任できる「私選弁護人」に最初から依頼して接見に行ってもらいましょう。初動から早期解放に向けて動くのであれば、費用はかかりますが私選弁護人への依頼が有利です。
依頼された弁護士であれば、逮捕された直後でも制限なく夫と接見できるので、弁護士を通じての状況確認ができます。また、接見前に依頼をすれば、伝言や質問事項を弁護士経由で夫に確認してもらったり、妻からの伝言を伝えたりもできます。
1-3. 夫の勤務先に連絡するべきか検討する
会社勤めの場合、夫の勤め先にどこまで事実を伝えるべきか迷うと思います。この点については、夫の意向を確認してから動くほうがよいでしょう。実務上の対応としては、妻から「急な体調不良」や「身内の不幸」を理由に会社に連絡するケースが一般的です。
もっとも、身体拘束が長期化すれば、いずれこの理由は通用しなくなります。そこで、まずは弁護士に相談し、身体拘束が何日間くらいになりそうな事案かの見通しを確認しましょう。そのうえで、夫の意向もふまえて誰に何をどこまで正直に伝えるか、あるいは伝えないかを決めていくべきです。
勤め先によっては、事情を理解して長期休暇扱いとしてくれる場合もあります。
1-4. 子どもや家族に話すかは年齢に合わせて決める
子どもや家族に事情を話すかどうかの判断は、家族関係や親子関係などによって変わります。刑事裁判になりそうかどうかや、家に帰って来るまでにどのくらいの期間を要しそうなのかなどの見通しを弁護士に尋ねたうえで判断するのがよいでしょう。
子どもに対しては、年齢によりますが「仕事でトラブルがあってしばらく帰って来られないみたい」などと伝えておくケースが多いです。
また、マスコミ報道などがなされてしまった事案では、夫の両親や自身の親に事情を話さざるを得ない場合もあります。この先どうなるのか、生活は大丈夫なのかなど、一人で悩み続けるよりも、誰かに話を聞いてもらえば不安な気持ちがやわらぐ可能性もあります。
1-5. 弁護士を通じて被害者と示談交渉をする
被害者がいる刑事事件において、早期の釈放や、前科がつかない不起訴を獲得するための最大の要因は、被害者との示談の成立です。実際に示談交渉をするのは弁護士になりますが、妻としては示談金を用意する必要があります。
弁護士は事案の内容や悪質性を加味した相応の金額での示談交渉を開始しますが、被害者感情次第でそれ以上の示談金を求められるケースも少なくありません。場合によっては親族からの援助が必要となる可能性もあり、そのために親族に事情を話す必要性が生じる場面もあります。
2. 夫が逮捕されたとき、妻がしてはいけないこと
夫が逮捕されたとき、以下のような行動はしないよう心がけてください。
一人で問題を抱え込む
証拠隠滅が疑われる行為をする
周囲に対してむやみに相談する
自力で被害者との示談交渉を試みる
警察にうそをつく
2-1. 一人で問題を抱え込む
妻一人で問題を抱え込むのはお勧めしません。
警察からの連絡を受けたあと、冷静になって弁護士に接見を依頼し、状況が把握できたとしても、不安な気持ちがなくなるわけではないと思います。だからといって一人で抱え込まず、必要な場合には親族などの支援にも頼りましょう。
また、率直に弁護士に話すのもお勧めです。とるべき対応について具体的なアドバイスをもらえるため、不安な気持ちがやわらぎます。
2-2. 証拠隠滅が疑われる行為をする
覚せい剤などの薬物事犯でよくある事例として、逮捕の連絡を受けて何げなく夫の部屋に入った際、薬物や使用器具を見つけてしまうケースがあります。夫の罪を軽くしたい気持ちからこれらを処分した場合は、妻も証拠隠滅罪に問われて逮捕される可能性があるため、このような行為は絶対にしてはなりません。
盗撮事犯で夫のパソコンに入っていたデータを削除するなどの行為も同様です。
2-3. 周囲にむやみに相談する
子どもや家族に打ち明けるのはやむを得ないとしても、他人にまで事情を話して相談するのはやめましょう。
夫が帰った際に、できる限りもとの状況から変わりなく社会生活に戻るのが理想です。他人に相談すると噂はすぐに広がります。あらぬ噂を立てられると、不起訴で無事に解決できたとしても、夫の社会復帰が絶望的になる可能性が高くなります。
他人との会話のなかで夫に関する話題が出ても、「出張中です」「体調不良です」などと濁しておく程度で済ませましょう。家族以外に話をするのであれば、支援を依頼するごく一部の人だけにしてください。
2-4. 自力で被害者との示談交渉を試みる
妻が警察から被害者の連絡先を聞いて謝罪したいと考えても、警察は加害者家族や本人には被害者の連絡先を絶対に教えてくれません。「弁護人限り」という厳しい条件下で初めて被害者連絡先が開示されるのが実務上のルールです。
当事者同士の接触は、脅迫や感情の悪化などにつながるおそれがあり、百害あって一利なしです。自力での示談交渉は避け、弁護士に一任してください。
2-5. 警察にうそをつく
妻も参考人聴取として警察から事情聴取されるケースがよくあります。このとき、警察に対しうそをついてはいけません。事情がわからないのであれば、明確に「わかりません」と伝えてください。証拠隠滅が疑われる行為をしないのと同様、警察に対しては誠実に対応するよう心がけましょう。
3. 逮捕された夫と連絡をとる方法は?
刑事手続き上、たとえ家族であっても、逮捕から72時間は一切、面会できません。弁護士はこうした制限に関係なくいつでも接見できるので、妻から夫への伝言や質問事項があれば、まずは弁護士経由で依頼するかたちになります。
これまでの報告や夫の意向確認、妻のみでは判断できない事情など、気になる点は何でも弁護士に聞いてもらうべきです。
筆者の弁護士事務所では、過去の事例において「子どものことは私の親にも事情を話したうえで協力してもらえるようになった。会社にもひとまず体調不良と伝えたから心配しないで」「本当にやっていないのであれば一緒に闘うから絶対に折れないで」といった伝言を依頼されたケースがありました。
留置場などに最長20日間にわたって身柄を拘束する「勾留決定」がなされると、妻も面会が可能となります。ただし、面会にあたっては、警察署にもよりますが、原則は平日のみ、1日1回15分程度、アクリル板越しで警察官1名の立ち会いがあり、1組につき2人から3人までなどの制限があります。
その際には衣類や本などを差し入れできますが、クロスワードパズルなどの書き込みを前提とした雑誌類は禁止されているところが多く、紐付きの衣類は自殺防止の観点から差し入れ不可とされるなど、非常に細かい規定があります。
差し入れしたい物品の可否については、事前に当該警察署留置係の職員や弁護士に尋ねて確認してください。また、夫が逮捕時に現金を持っていなかった場合には、現金を差し入れると拘置所内で弁当や物品を購入できるので非常に喜ばれます。
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4. 夫が逮捕されたらどうなる? 家宅捜索を受ける? 仕事は解雇される?対処法も解説
逮捕の前後、あるいは逮捕と同時に家宅捜索を受ける場合があります。これは裁判所の令状に基づくもので拒否できないため、素直に応じてください。
逮捕によって夫の勤め先から解雇されるのではないかという点について、結論から言うと、原則として逮捕されただけでただちに解雇はされません。ただし、無断欠勤が続いたり、裁判の結果、有罪判決が確定して前科がついたりすれば、社内の懲戒規定に基づき解雇事由に当てはまるとして解雇となる可能性が高まります。
まずは弁護士と連携し、少なくとも無断欠勤扱いとされないような初期対応をしたうえで、夫の意向も尋ねて進めてください。
5. 夫が逮捕されたあとの刑事手続きの流れ
夫が逮捕された場合は、おおむね以下の流れで刑事手続きが進みます。
5-1. 逮捕~検察官送致|最大48時間
逮捕によって夫の身体が拘束されると、刑事手続き上、警察は48時間以内に供述調書などの書類とともに、夫の身柄を検察官に送らなければなりません。逮捕者は検察庁に連れて行かれ、1日がかりで手続きが行われます。
原則的に全事件が検察庁に送致されますが、例外的に、警察だけの判断で事件を終了させる場合もあります。これを「微罪処分(びざいしょぶん)」と言います。
微罪処分となり得るのは、すでに被害者の処罰感情がない場合や、犯罪の態様が軽微である場合などです。微罪処分をめざすのであれば、この48時間という短時間のなかで被害者との示談から警察への示談書の提出までを行う弁護活動が求められます。
5-2. 検察官送致~勾留請求|最大24時間
送致されると、夫は検察官からの取り調べを受けます。取り調べの結果、証拠隠滅や逃亡のおそれの有無の観点から、検察官が夫の身柄を引き続き拘束する必要があると判断した場合は、送致から最大24時間以内に裁判所に勾留請求をします。
その必要がないと判断されれば釈放されますが、多くのケースでは勾留がつきます。この段階で弁護士に求められるのは、勾留の必要がない旨を裏づけられる証拠と意見書を裁判官に提出し、いかに説得できるかにあります。
5-3. 起訴前勾留~起訴または不起訴|最大20日間
検察官による勾留請求を裁判所が認めると、まずは原則として身柄を10日間拘束され、夫はその間も引き続き警察や検察官からの取り調べを受けます。基本的に、この10日間で起訴するか不起訴にするかが判断されますが、事案によっては10日間では判断しきれないケースもあります。
その場合、検察官は追加でさらに10日間の勾留延長を裁判所に求めます。つまり、夫は勾留請求されてから最大で20日間、逮捕日から起算すると最大23日間の身体拘束を受けます。
この時点では、前歴はつくものの、前科はついていない状態です。弁護士の仕事としては、この勾留期間中に被害者との示談を成立させ、前科のつかない不起訴処分の獲得がすべてと言っても過言ではありません。
勾留期間の終盤になると、検察官は起訴または不起訴の判断をします。不起訴となれば釈放され、前科はつきません。
5-4. 起訴後勾留
起訴となった場合は、すぐに裁判が開始されるわけではありません。裁判の期日は数週間から1カ月ほど先に設定されるのが一般的です。裁判員裁判などはさらに先の期日になるので、その間も夫は身体拘束を受けます。これを「起訴後勾留」と言います。
起訴後勾留は、最初は2カ月間とされていますが、1カ月単位で継続できます。
ただし、起訴後は保釈請求が可能になります。弁護士としては保釈請求を行い、保釈によって身体拘束からの解放をめざします。
5-5. 刑事裁判~判決
日本の刑事裁判は、検察官が証拠の確実性などから十中八九有罪にできると判断したものが起訴される傾向にあります。したがって、起訴されると99%以上は有罪となり、前科がつく可能性がきわめて高くなります。
刑事裁判自体は、事案によりますが、被告人が犯罪の事実を全面的に認めている「認め事件」では1回限りで判決まで行われる裁判もありますし、複数回の審理を重ねて判決を言い渡す事案もあります。
いずれにしても、執行猶予が付されずに拘禁刑の判決を受ければ、夫は刑務所へ送られます。執行猶予つきの有罪判決や無罪判決となれば、その場で身体拘束から解放されます。
6. 夫が逮捕された場合の注意点|迅速な対応が大切
夫が逮捕された場合、証拠隠滅防止の観点から、逮捕直後の夫との面会はできません。ただし、弁護士であればすぐに接見ができるため、妻は弁護士を通じて状況を把握できます。
夫が逮捕されてから、検察官が起訴または不起訴の判断をするまでは最大23日間あり、これは法律の手続に則った厳格な時間制限の下で進んでいきます。ただし、余罪があり別罪で再逮捕された場合には、最大23日のカウントがその時点で振り出しに戻ります。
前科がつくのを回避し、もとの生活を取り戻すための最大の分岐点は、逮捕直後から起訴されるまでの間です。刑事弁護ではこの期間が非常に重要な期間となるため、警察から電話があったその日のうちに刑事弁護に長けた弁護士に相談し、即座に接見に行ってもらうようにしてください。その判断が夫と家族の今後の人生を左右します。
7. 夫が逮捕された場合に、すぐに弁護士に相談や依頼をするメリット
夫が逮捕された場合、すぐに弁護士に依頼や相談をすると、以下のメリットがあります。
孤独な留置場において、弁護士が唯一の信頼できる味方となる
早期の身柄解放や不起訴に向けた弁護活動を依頼できる
起訴された場合でも、保釈請求や重い刑罰を避けるための弁護活動を依頼できる
7-1. 孤独な留置場において、弁護士が唯一の信頼できる味方となる
逮捕直後、警察はすぐに取り調べを行い、自白を求めてきます。本来は無実であるのに犯罪者と扱われる冤罪(えんざい)のリスクはここで生まれます。
「自白すればすぐに出られる」などの違法な圧迫捜査が行われたとしても、法律に詳しくないと「警察が言うのだから本当だろう」と信じて絶望し、事実とは異なる自白をしてしまう危険性が高いのもこの初期段階です。
弁護士に依頼をすれば、すぐに留置所に駆けつけて接見し、取り調べを受けるにあたってのアドバイスや対策を教えてもらえます。また、違法な取り調べを行っている刑事がいた場合には、抗議文を送付して即座にやめさせ、二度と違法な取り調べが行われないようにすることも可能です。
7-2. 早期の身柄解放や不起訴に向けた弁護活動を依頼できる
家族としては、一日も早く夫の身柄が解放されて帰宅し、刑事裁判にかけられずに不起訴処分となるよう願うでしょう。
早期の身柄解放については、刑事手続きの段階によってとる法的手続きが異なります。なおかつ高度な専門知識と迅速な対応が求められる場面でもあるため、弁護士への依頼がお勧めです。
たとえば検察官送致のあとに勾留請求が認められた場合、追加で10日間は留置場で過ごさざるを得なくなりますが、「準抗告」という不服申立て手段を行い、これが認められて10日間を待たずに釈放されるケースも少なくありません。筆者の弁護士事務所でも、準抗告を行い認められた事例が多々あります。
また、不起訴処分を得るためには、被害者との示談交渉が必須です。被害者と示談が成立し、被害届を取り下げてもらえれば、すぐに釈放されて前科もつかない可能性が非常に高くなります。
7-3. 起訴された場合でも、保釈請求や重い刑罰を避けるための弁護活動を依頼できる
検察官が不起訴処分の判断をしてくれるのが理想的ですが、すべてがそうなるとは限りません。
一方で、起訴されると99%以上の割合で有罪となる日本の刑事裁判ですが、起訴後であっても絶望する必要はありません。身柄の解放を求められる保釈請求は、逃亡のおそれがないという証拠をいかに構成するかにおいて弁護士の力量が問われます。
また、裁判においては、妻に情状証人として立ってもらって再犯防止のための家族の支援体制を理解してもらい、刑務所に収監される実刑判決を回避して執行猶予つき判決の獲得をめざします。
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8. 弁護士に相談や依頼をする方法
夫が逮捕されて弁護士に相談や依頼をする場合、まずはインターネットの検索エンジンで「夫 逮捕」「夫が逮捕された」などのキーワードを入れ、弁護士を検索してみてください。
選び方のポイントとして、まずは何人かの弁護士に直接電話して問い合わせをし、刑事事件の経験が豊富であるかどうか、事件内容の見通しやリスクも具体的かつ明確に話してくれるかどうか、よく話を聞いてくれるかどうか、費用感が適切であるかどうかなどを確認してください。すぐに動いてくれるかという初動のスピードも、刑事事件では非常に重要です。
弁護士費用は弁護士によってさまざまで、相性もあれば、弁護方針にも人によって違いがあります。弁護士と実際に面談をして率直な不安や質問をぶつけ、夫の事件に対する見通しや方針、依頼する場合の費用、その弁護士の人柄や相性などを確認して、最終的に「この人なら任せられる」と感じた弁護士に依頼するとよいでしょう。
9. 刑事事件の弁護士費用の相場
妻にとって、弁護士に依頼する際に気になるのは費用面でしょう。弁護士費用は決して安くはありませんが、人生最大の分岐点であると考えれば、出費を抑えるべき場面ではないと思います。
弁護士本人の設定金額や事件の難易度、内容によりますが、起訴前の弁護活動であれば、着手金として30万円から、報酬金は、不起訴処分を得た場合や請求または申立てによって釈放が認められた場合など弁護士の成果に応じて30万円からとなるのが一般的です。
一方で、起訴後の弁護活動も含めた場合は、着手金は60万円から、報酬金は執行猶予つき判決を得られた場合など弁護士の成果に応じて60万円からがおおむねの相場です。なお、上記の着手金や報酬金以外に、接見に行った場合の日当や裁判期日に出廷した場合の出廷費用が別途かかる場合があります。
また、殺人や強盗致死傷などの重大事件を扱う裁判員裁判対象事件となれば、弁護士費用は上記金額よりもはるかに高額になります。また、余罪が多数ある場合、1事件ごとに弁護士費用を請求する弁護士事務所が大多数です。
弁護士に依頼する場合は事前に見積もりを出してもらい、不明点は契約前に遠慮なく徹底的に質問して確認してください。
10. 夫が逮捕された妻からの相談事例
ここでは、筆者の弁護士事務所で実際に解決した、夫の逮捕について妻から相談を受けた事例について紹介します。なお、守秘義務の関係上、事案をある程度改変して個人が特定できないように配慮しています。
ある夜、妻から「夫が盗撮で逮捕され、警察も詳細を教えてくれない」という相談の電話を受けました。筆者は、夫が何をしたのか、本当にしたのか、夫の勤務先の誰にどこまで伝えてよいのかなど、知りたい内容を聞き出し、その時点ですでに終電がなかったためタクシーで警察署に向かい、ただちに夫と接見をしました。
夫と会社への連絡内容を決め、翌日、妻には「直属の上司にのみ、急病であると伝えて休ませる」と伝えるよう指示しました。夫は10日間の勾留決定がされましたが、「妻がいて日常的な監督機能がある」「持ち家があるため逃亡の可能性が低い」「子がいるため家庭内での責任がある」などの事情を論理的に疎明して準抗告を勝ち取り、本来であれば勾留が10日間続くところ、逮捕からわずか4日間で釈放となりました。
その後、夫は会社をクビにならずに復職し、出勤しながら普段どおりの生活を送りました。筆者はその間に被害者との示談交渉に臨み、被害者からの宥恕(ゆうじょ/処罰を望まないこと)がある示談を締結するに至りました。その旨を検察官にも報告し、不起訴処分によって無事に解決しました。
11. 夫の逮捕についてよくある質問
Q. 前科がつくと会社をクビになる?
前科がついても、それだけで即解雇とはなりません。しかし、逮捕や勾留に伴う無断欠勤が長期間にわたると就業規則違反となり、解雇されるケースが圧倒的に多いです。
痴漢や盗撮など比較的軽微な事案であれば、早期に被害者との示談がまとまり、会社に知られずにもとの生活に戻るケースも多数あります。一方で、余罪多数などで勾留期間の長期化が不可避の事案では、会社との適切な休職の交渉が雇用維持の絶対条件になります。
Q. 子どもがいるが、子どもの将来のために夫と離婚すべき?
焦って結論を出す必要はありません。逮捕を理由に夫と離婚するかどうかは、究極的には夫婦間の問題ですが、刑務所に行くような事案なのか、マスコミ報道されていて子どもに実害が出ているのかなどを考慮して慎重に決めるべきです。
離婚に夫が合意すれば、夫婦間の話し合いによって離婚ができます。妻が離婚を望んでも夫が応じてくれない場合、または条件などで協議がまとまらない場合には、裁判所に離婚調停を申し立てます。実刑判決が確定したり、マスコミ報道で子どもにいじめなどの実害が出ている場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、裁判所が離婚を認めやすくなります。
Q. 夫が逮捕されたら年次有給休暇は使える?
年次有給休暇の申請権は、原則として夫にあります。したがって、妻が代わりに申請しても、会社にはそれを受理する法的義務はありません。
実務上よく行われるものとしては、有給休暇申請書や委任状を弁護士が警察署に持参して夫に差し入れし、夫に直筆で記入してもらったうえで会社に提出し、正当に受理させる方法があります。
ただし、どれくらいの有給休暇消化日数が必要かは不明瞭であるため、弁護士と相談したうえで、少し多めに有給休暇を使うようにしてください。早期釈放された場合には、早めに復職すればよいだけです。
12. まとめ 夫が逮捕されたと連絡を受けた場合はすみやかに弁護士に相談を
夫が逮捕されたと警察から連絡を受けた場合は、まずは冷静になり、すみやかに弁護士に連絡をして初動を一任してください。夫への接見や勤務先への対応、被害者との示談交渉など、あらゆる側面で家族のサポートをしてもらえます。妻が一人で問題を抱え込み、捜査を妨害するような行為をしたり、自力で被害者との示談交渉を試みたりといった行動は避けるべきです。
依頼する弁護士を探す場合は、インターネットで刑事事件に強い何人かの弁護士を探し、直接、問い合わせをして、経験値や初動のスピードが見込めるかどうか、人柄や費用感などを確認してから依頼をしてください。
妻や家族ができる唯一かつ最善の行動は、刑事事件の経験豊富な弁護士へのすみやかな相談と依頼です。信頼のできる弁護士に依頼をすれば、家族がもとの生活を取り戻せるよう全力でサポートしてくれるはずです。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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