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1. 起訴とは?不起訴との違い 簡単に分かりやすく解説
「起訴」とは、検察官が裁判所に対して、被疑者(罪を犯したと疑われる人)の刑事責任に関する審理を求める処分です。
警察と検察は犯罪の発生を認識すると、事実関係や犯人を突き止めるための捜査を行います。捜査の結果、間違いなく被疑者が犯人であると確信でき、かつ刑罰を科すのが相当と判断した場合は、検察官が被疑者を起訴します。
起訴された被疑者は、それ以降「被告人」と呼ばれるようになり、裁判所の審理を受けることになります。裁判所によって「有罪」が認定され、その判断が確定すると、被告人に対して刑罰が科されます。
起訴に対して、裁判所の審理を求めずに刑事手続きを終了させる処分は「不起訴」と呼ばれます。別に真犯人がいることが分かった場合や、被疑者が犯人であることを示す十分な証拠がない場合は不起訴となります。また、罪を犯したことが確実でも、検察官の判断によって不起訴となることがあります。不起訴となった場合は、刑事裁判などは開かれず、刑罰も科されません。
2. 起訴・不起訴は誰がいつ、どのように決めるのか|判断するのは検察官
被疑者を起訴するか、それとも不起訴にするかは検察官が判断します。
検察官が被疑者を起訴するのは実務上、刑事裁判で犯罪事実と被疑者(被告人)が犯人であることを証拠によって立証できると判断した場合に限られます。
また、犯罪を立証できる場合でも、刑罰を科すのが適切でないと検察官が判断した場合は、不起訴とすることがあります。これを起訴猶予と言います。たとえば犯罪が比較的軽微であって、被疑者が十分に反省しており、被害弁償も行われているといった事情があれば、不起訴となる可能性が高いと考えられます。
起訴・不起訴の判断が行われる時期は、被疑者が身柄を拘束されている「身柄事件」か、それとも身柄を拘束せず捜査が行われる「在宅事件」かによって異なります。
身柄事件の場合は通常、逮捕・勾留による身柄拘束の期間(最長23日間)が終わるまでに、起訴か不起訴かが決定されます。在宅事件の場合は、身柄事件のような時間制限がないため、起訴・不起訴の時期は事案によってまちまちです。
3. 【要注意】起訴された場合の有罪率は99%以上
令和6年度の司法統計によると、同年に終結した地方裁判所の刑事裁判(第一審判決)の終局区分は、次のとおりです。
・有罪:4万5529件
・無罪:84件
・公訴棄却:177件
・管轄違い:2件
・その他:1765件
・同一被告人に関する事件の併合:1万9829件
有罪・無罪の判断がなされた件数だけに絞ると、4万5613件中、4万5529件が有罪で、その割合は約99.8%に上ります。つまり、一度起訴されると有罪となる可能性がきわめて高いことが分かります。
したがって、刑罰や前科を避けるためには、できる限り不起訴処分を目指すことが大切です。
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4. 起訴の2つの種類
起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。正式起訴では裁判所の法廷で刑事裁判が行われますが、略式起訴では書面のみで簡易的な審理が行われます。
| 正式起訴 | 略式起訴 |
|---|---|---|
対象となる事件 | すべて | 100万円以下の罰金または 科料を科す場合 |
被疑者(被告人)の同意 | 不要 | 必要 |
公開の有無 | 公開 | 非公開 |
審理の方式 | 対面、証人尋問や 被告人質問などが行われる | 書面審理のみ |
不服申立ての方法 | 控訴、上告など | 正式裁判の請求 |
4-1. 正式起訴|公開法廷で審理が行われる
「正式起訴」は起訴の原則的な方式で、「公判請求」と呼ばれることもあります。
正式起訴がなされると、裁判所の法廷で審理(公判手続き)が行われます。公判手続きには裁判官、検察官、被告人および弁護人が出席し、対面で実施されます。証人尋問を行うケースもあります。
公判手続きでは、被告人にも主張や反論の機会が十分に与えられるのが大きな特徴です。一方で、被告人は期日ごとに裁判所へ出頭する必要があり、審理に時間がかかるなどの負担があります。
4-2. 略式起訴|非公開で簡易な審理が行われる
「略式起訴」は、100万円以下の罰金または科料を科す場合で、かつ被疑者(被告人)に異議がない場合に限って認められています。「略式命令請求」と呼ばれることもあります。
略式起訴がなされると、簡易的な手続き(=略式手続き)によって裁判所が審理を行います。審理は書面のみを通じて行われ、被告人には実質的に反論の機会が与えられません。そのため、略式起訴に同意する場合は罪を認めることになります。
略式起訴の場合、審理はごく短期間で完了します。審理の場に被告人が出頭する必要はなく、被告人質問なども行われません。被告人にとっては負担が軽いうえに、拘禁刑以上の刑を科されることがないというメリットもあります。
なお、裁判所の略式命令の内容に異議がある場合は、告知を受けた日から14日以内に限り正式裁判を請求できます。
5. 起訴されるとどうなる?デメリットや人生への影響
検察官に起訴されると、次のようなデメリットやリスクが生じます。できる限り起訴を避けるのが望ましいでしょう。
5-1. 刑事裁判にかけられる
正式起訴された場合は、裁判所で行われる公判手続き(刑事裁判)にかけられます。準備を整えて期日に出席するだけでも大きな負担となるうえ、公開で行われるため心理的なプレッシャーもかかるでしょう。
なお略式起訴であれば、公判手続きは実施されず書面審理のみが行われるので、上記のような負担は比較的軽くなります。
5-2. 有罪判決が確定すると前科が付く
有罪判決(または有罪の略式命令)が確定すると、前科が付きます。「前科」とは、過去に刑罰を受けた経歴のことです。前科があると、再犯時の刑が重くなる可能性があるほか、就職活動などで不利になることがあります。
5-3. 拘禁刑や罰金などの刑事罰を受ける
拘禁刑の有罪判決が確定すると、執行猶予が付されていない限り刑務所に収監されます。収監されている間は、社会から隔絶された生活を送らなければなりません。
罰金であれば刑務所には収監されませんが、多額の現金を検察庁に納付する必要が生じます。経済的に大きな痛手となってしまうでしょう。
5-4. 解雇・退学処分・人間関係の破綻など、生活にも様々な影響が生じる
有罪が確定すれば、勤務先を解雇されたり、通学している学校から退学処分を受けたりするおそれがあります。また、家族や友人との関係が悪化するなど、人間関係に深刻な影響が出るケースもあります。
起訴されて有罪になると、社会生活のさまざまな場面で不便やつらさを感じることになります。今後の生活に悪影響を及ぼさないためにも、できる限り不起訴処分を目指すことが重要です。
6. 身柄事件における起訴の流れ
逮捕・勾留によって被疑者の身柄が拘束されている刑事事件は「身柄事件」と呼ばれます。
身柄事件には厳格な時間制限が設けられており、多くの場合は身柄拘束の期間が満了するまでに起訴・不起訴の判断が行われます。身柄事件において起訴されるまでの流れは、次のとおりです。
6-1. 逮捕
罪を犯したと疑うに足る相当の理由があり、かつ罪証隠滅や逃亡のおそれを防ぐ必要があるときは、警察官は裁判官に逮捕状を請求します。発行された逮捕状に基づいて、警察官は被疑者を逮捕します。
ただし、犯行現場で被疑者が取り押さえられた場合などには、逮捕状がなくても現行犯逮捕が認められます。逮捕された被疑者は、警察署内に設けられた留置場に収容されます。留置場では、警察官の取り調べを受けます。
6-2. 【逮捕後48時間以内】検察官送致(送検)
原則として逮捕後48時間以内に、警察官は被疑者と書類・証拠物を検察官に送致します(送検)。送検後、被疑者は検察官の取り調べを受けます。
ただし、一部の軽微な犯罪については、警察限りで刑事手続きを終了させる「微罪処分」が認められています。微罪処分の場合は送検が行われず、被疑者は釈放されます。刑罰も科されません。
6-3. 【送検後24時間以内】勾留請求
検察官は、被疑者等を受け取ってから24時間以内かつ、逮捕後72時間以内に、被疑者の勾留を請求するかどうかを判断します。
「勾留」とは、逮捕に続いて行われる長期間の身柄拘束です。被疑者の住居が不定であるか、または罪証隠滅や逃亡のおそれがあり、かつ必要性が認められる場合に限って勾留が行われます。
勾留請求が行われると、裁判官が勾留の可否を判断したうえで、認められた場合は勾留状が発付されます。勾留請求が行われない場合は、被疑者は釈放されて在宅事件へ移行します。
6-4. 【最長20日間】起訴前勾留
裁判官によって勾留状が発せられた場合、逮捕から起訴前勾留に移行します。起訴前勾留の期間は最長20日間です。被疑者はその間、警察官や検察官の取り調べを受けます。
起訴前勾留に対しては「準抗告」という異議申立てが可能です。裁判官によって準抗告が認められると、勾留が取り消されて被疑者は釈放され、在宅事件へ移行します。
6-5. 起訴・不起訴
通常は、起訴前勾留の期間が終わるまでに、検察官が正式起訴・略式起訴・不起訴のいずれかを決定します。
略式起訴の場合は、被疑者が事前に同意書を作成し、検察官に提出します。略式起訴に同意せず、正式裁判を請求することも可能です。その場合は正式起訴となります。
不起訴の場合はその時点で、略式起訴の場合は罰金または科料を納付した時点で被疑者が釈放されます。正式起訴の場合は起訴後勾留に移行し、被疑者(被告人)の身柄は引き続き拘束されます。
7. 在宅事件における起訴の流れ
逮捕・勾留が行われず、被疑者の身柄が拘束されていない刑事事件は「在宅事件」と呼ばれています。在宅事件については、身柄事件のような厳格な時間制限は設けられていません。そのため、起訴・不起訴の判断がなされる時期は事案によってまちまちです。
在宅事件において起訴されるまでの流れは、次のとおりです。
7-1. 警察署への呼び出し・警察官の取り調べ
在宅事件の被疑者は、警察から警察署へ出頭するよう求められます。出頭に応じるかどうかは任意です。警察署に出頭した場合は、その場で警察官の取り調べを受けます。
7-2. 検察庁への呼び出し・検察官の取り調べ
警察の取り調べの後、検察からも検察庁に出頭するよう求められます。検察官が起訴・不起訴を判断するに当たり、被疑者から事件に関する話を聞くためです。
警察署と同じく、検察庁に出頭するかどうかも任意です。検察庁に出頭した場合は、その場で検察官の取り調べを受けます。
7-3. 起訴・不起訴
捜査や被疑者の取り調べなどを踏まえて、検察官が正式起訴・略式起訴・不起訴のいずれかの処分を行います。略式起訴については、被疑者に異議がないことが必要です。
不起訴の場合は、その時点で刑事手続きが終了します。正式起訴または略式起訴の場合は、審理の手続きへ移行します。
8. 起訴された後の刑事手続きの流れ
検察官に起訴された後、有罪・無罪の判断が出るまでの手続きの流れをパターン別に紹介します。
8-1. 身柄事件・正式起訴の場合
身柄事件で正式起訴された場合は、引き続き被告人の身柄が拘束されます(起訴後勾留)。
起訴後勾留中は、裁判所に対して保釈を請求できます。保釈が認められた場合は、保釈保証金を納付することを条件に身柄拘束が一時的に解除されます。
起訴から1カ月程度を目安に、裁判所で公判手続きが実施されます。公判手続きには裁判官、検察官、被告人および弁護人が出席して、有罪・無罪および量刑の審理が行われます。
審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、有罪であれば刑が執行されます。ただし執行猶予が付された場合は、一定期間刑の執行が猶予されます。
8-2. 在宅事件・正式起訴(在宅起訴)の場合
在宅事件で正式起訴された場合は、起訴から1カ月後程度を目安に、裁判所が第1回公判期日を指定します。被告人は、公判期日に裁判所へ出頭して審理を受けます。
公判手続きの流れは、身柄事件と同じです。最終的に有罪判決が確定すると、刑が執行されます。ただし執行猶予が付された場合は、一定期間刑の執行が猶予されます。
8-3. 即決裁判手続の場合
事案が明白かつ軽微であり、証拠調べが速やかに終わると見込まれる場合などの事情があるときは、検察官は被疑者および弁護人の同意を得たうえで「即決裁判手続」の申立てをすることができます。
即決裁判手続は正式起訴の一種ですが、審理が大幅に簡略化され、原則として即日で判決が言い渡されます。
被告人は有罪である旨を陳述しなければなりません。もし無罪を主張したいなら、即決裁判手続に同意せず正式裁判を求めることになります。
8-4. 略式起訴の場合
身柄事件で略式起訴された場合は、原則としてその当日に簡易裁判所が略式命令を発します。家族などの協力を得て、準備した罰金を納付すると、その時点で被疑者は釈放されます。
在宅事件で略式起訴された場合は、その後1~2カ月程度で略式命令が発せられるのが一般的です。起訴状・略式命令・納付書が自宅に郵送されてくるので、納付期限までに罰金または科料を支払う必要があります。
9. 起訴を回避するためのポイント
起訴されると有罪になる可能性がきわめて高いので、刑罰や前科を避けるには不起訴を目指すことが大切です。起訴を回避するためには、次のポイントを押さえながら対応しましょう。
9-1. 被害者と示談して被害弁償を行う
被害者のいる犯罪では、被害弁償が行われたかどうかが起訴・不起訴の判断に大きく影響します。不起訴を目指すに当たっては、できる限り早く被害者と連絡をとり、示談交渉を試みましょう。
ただし、被疑者本人との示談交渉は拒否されるケースも多いので、弁護士を通じて示談交渉を行う方法が一般的です。
9-2. 真摯な反省の態度を示す
比較的軽微な犯罪では、被疑者が真摯に反省していると評価されれば、刑罰を科す必要はないと検察官が判断し、不起訴となる可能性があります。
そのため、反省文の提出や社会貢献活動など、反省の意思を具体的な行動で示すことも有効とされています。
9-3. 家族が本人の監督を誓約する
被疑者の再犯を防止するため、家族が監督を誓約していれば、刑罰を科す必要性は低いと検察官が判断し、不起訴となる可能性が高まります。家族が誓約書を作成したうえで、弁護人を通じて検察官に提出するなどの対応が考えられます。
9-4. 身に覚えがない場合は、黙秘やアリバイの主張などを行う
疑われている犯罪について身に覚えがない場合は、「嫌疑なし」または「嫌疑不十分」による不起訴を目指します。
検察官は実務上、犯罪事実と被疑者が犯人であることを確実に立証できると判断した場合にのみ起訴します。そのため、身に覚えがない場合は捜査機関に不利な供述をしないよう、黙秘を選択することが有効なこともあります。
また、事件が発生したとされる日時に別の場所にいたのであれば、その事実(=アリバイ)を主張することも考えられます。黙秘するのか、それともアリバイなどを供述するのかについては、弁護人と相談したうえで判断してください。
10. 起訴のリスクがあるときに、弁護士に相談するメリット
警察や検察に犯罪を疑われており、起訴される可能性が生じている場合には、すぐに弁護士へ相談することをおすすめします。刑事弁護について弁護士に相談することの主なメリットは、次のとおりです。
10-1. 取り調べに臨む際の心構えや注意点をアドバイスしてもらえる
警察や検察から出頭を求められた場合や逮捕された場合は、取り調べへの対応が非常に重要になります。
弁護士に相談すれば、取り調べに臨む際の心構えや注意点などのアドバイスを受けられます。これにより、不安が軽減されるとともに、不用意な供述をしてしまうリスクも防げます。
10-2. 早期釈放や不起訴の可能性が高まる
弁護士に依頼すれば、身柄の解放や不起訴に向けた弁護活動を行ってもらえます。被害者との示談交渉や検察官への働きかけなど、多角的かつ効果的な弁護活動により、早期釈放や不起訴の可能性が高まります。
10-3. 仮に起訴されても、重い刑事処分を避けるための弁護活動を依頼できる
検察官に起訴された場合でも、弁護士に依頼すれば、無罪の主張や量刑の軽減を目指した弁護活動を行ってもらえます。無実であればアリバイなど、罪を認める場合は反省や被害弁償の状況などを効果的に主張してもらえるので、重い刑事処分を回避しやすくなります。
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11. 起訴についてよくある質問
Q. 逮捕されたら必ず起訴される?
逮捕されても、必ず起訴されるわけではありません。罪を犯したことを確実に立証でき、かつ刑罰を科すのが相当だと検察官が判断した場合に限って起訴されます。
別の真犯人が判明した場合や、証拠が不十分な場合、犯罪が軽微で更生の可能性が高い場合などには、逮捕後でも不起訴となることがあります。
Q. 起訴されると必ず裁判になる?
正式起訴であれば、被告人が出頭して審理を受ける公判手続き(刑事裁判)が行われます。
これに対して、略式起訴の場合は公判手続きが開かれず、書面審理のみが行われます。略式起訴は、100万円以下の罰金または科料を科す場合で、かつ被疑者(被告人)に異議がない場合のみ認められます。
Q. 起訴と書類送検は何が違う?
起訴は、裁判所に対して被疑者の刑事責任に関する審理を求める処分です。
書類送検は、身柄を拘束されていない被疑者について、捜査資料を検察官に送致することを意味します。書類送検されても、起訴されるとは限りません。
起訴は検察官、書類送検は警察官が行います。
Q. 在宅起訴されたら、逮捕される?
在宅起訴された後で、起訴内容を理由に逮捕されることは基本的にありません。ただし余罪が判明した場合は、その余罪を理由に逮捕されることがあります。
12. まとめ 刑事事件では起訴されないことが重要
検察官に起訴されると、公判手続きまたは略式手続きによって刑事責任の審理が行われます。日本では起訴後の有罪率がきわめて高いため、起訴されるとほとんどのケースで刑罰が科され、前科が付いてしまいます。
刑罰や前科を避けるためには、早い段階から弁護士に相談して、弁護活動を行ってもらいましょう。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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