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1. 逮捕されるとどうなる? 逮捕後の一般的な流れ【フローチャート】
罪を犯して逮捕されると、一般的に以下のような流れで手続きが進みます。
それぞれの手続きについて、以下で詳しく解説します。
1-1. 逮捕|警察での取り調べ
逮捕には、「通常逮捕」「現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)」「緊急逮捕」の3つの種類があり、それぞれ逮捕に必要な要件が異なります。しかし、逮捕後の流れには大きな違いはありません。
逮捕直後は警察署の留置場に連行され、犯罪を疑われる「被疑者」として取り調べを受けます。詳しくは次項以下で説明しますが、警察は逮捕後48時間以内に事件に関する書類や証拠をそろえ、事件を検察官に引き継ぐ「送致」をするか、釈放するかの判断をします。これは、いずれの逮捕方法でも同じです。
逮捕直後に被疑者と面会ができるのは、原則として弁護士のみです。逮捕直後に弁護士と面会する「弁護士接見」は、その後の人生を左右するほどきわめて重要なものです。逮捕直後の取り調べで作成される「供述調書」は、後の裁判で非常に強い証拠能力を持ち、一度サインした調書をあとから覆すのは困難です。弁護士接見で、不利な供述を防止するためのアドバイスを受けられます。
また、早期釈放に向けて、被害者との示談交渉や、釈放後の生活に支障をきたさないよう家族や職場へ連絡するなど、弁護士に活動してもらうことで得られるメリットは数多くあります。
1-2. 送検(逮捕後48時間以内)|検察官への送致
前項のとおり、逮捕後の被疑者の拘束は48時間以内と決められています。警察官は逮捕後、48時間以内に事件に関する書類や証拠をそろえ、被疑者の身柄とともに検察官へ送致(送検)しなければなりません。
警察官の判断で検察官送致が行われずに釈放される「微罪処分」という制度もありますが、逮捕される案件が微罪処分で終了することはほとんどありません。これは、通常すべての事件が検察官へ送致される全件送致の原則があるためです。
1-3. 勾留決定・請求(送検後24時間以内)|身柄拘束が長期化するかの分かれ道
警察官が被疑者を送検したあと、引き続き身柄を拘束する必要があると検察官が判断した場合、送検から24時間以内に検察官が裁判官に対して勾留請求を行います。勾留請求をされるかどうか、逮捕からここまでの72時間(3日間)が、逮捕に伴う最初の大きな山場です。
勾留が認められるには、以下の3つの要件が必要です。
罪を犯したと疑うに足りる相当な理由である「犯罪の嫌疑」があること
証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、住居不定のいずれかに該当し「勾留の理由」があること
勾留の必要性があること
「勾留」とは、裁判で判決が出る前に、証拠隠滅や逃亡を防ぐ目的で行われる身体拘束のことを指します。なお「拘留(こうりゅう)」は読み方は同じですが、これは有罪判決を受けた際に科される刑罰の一つで、1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束されることを指す言葉です。
1-4. 起訴前勾留(最大20日間)|取り調べ継続
検察官の勾留請求を受けて裁判官が勾留決定し、勾留状を発した場合は、逮捕から起訴前勾留に移行します。起訴前勾留は、原則として勾留請求の日から10日間ですが、検察官の請求によりさらに10日間延長され、最大20日間の身柄拘束がなされます。起訴前勾留中は、引き続き警察官や検察官の取り調べを受けることになります。
1-5. 起訴または不起訴|検察官が決定する
警察が集めた証拠、示談の有無、初犯かどうかなどをもとに、検察官が単独で起訴するか不起訴とするかの判断を行います。起訴とは、被疑者に対して検察官が刑事裁判を開くよう請求することです。身柄拘束している事件では、通常10日から20日という勾留の満期までに起訴または不起訴を決定するため、逮捕から最長23日以内に判断されます。
起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2つがあります。正式起訴は「公判請求」とも呼ばれ、裁判所つまり公開の法廷で正式な裁判を開くよう求める手続きです。略式起訴は正式な裁判の手続きを省略する起訴手続きで、書面のみの審理で100万円以下の罰金または科料の刑罰が科されます。
不起訴とは、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、検察官が被疑者を刑事裁判にかけないと決定する処分です。不起訴処分であれば、被疑者に前科はつきません。
注目すべきは、起訴猶予です。犯罪の嫌疑は十分にあるものの、犯罪の軽重や背景、情状、反省の度合いなどを総合的に考慮し、検察官の裁量で起訴を見送ることがあります。
また、証拠不十分などで、検察官が勾留期限までに起訴か不起訴かを決定できない場合には、いったん身柄を解放し、在宅のまま捜査を継続する「処分保留釈放」となることもあります。処分保留釈放となったあと、最終的に不起訴となるケースも少なくありませんが、釈放後も刑事事件としては終了していません。新たな証拠が見つかれば後日、起訴(や再逮捕)される可能性があります。
1-6. 起訴後勾留|原則として保釈請求が可能
検察官によって起訴されると、「被疑者」から「被告人」に立場が変わります。正式起訴された場合は、裁判が確定するまで引き続き、被告人の身柄が警察の留置施設や拘置所で拘束されます。起訴後勾留の期間は原則2カ月ですが、1カ月ごとの更新で長期化され、保釈が認められない限り継続します。
検察官によって正式起訴された直後から、保釈請求が可能になります。保釈とは、保釈保証金(保釈金)を納付することで一時的に身柄拘束を解いてもらう手続きです。起訴後勾留期間中は、証拠の収集や整理、示談交渉の完了を最優先で行うべき期間であるため、弁護士と連携をとって公判手続きに向けた準備を整えます。
1-7. 公判手続き(刑事裁判)|裁判所の審理を受ける
刑事裁判の公判手続きの流れは、大きく分けて「冒頭手続き」「証拠調べ手続き」「弁論手続き」「判決」の4段階で進み、最終的に裁判官より判決が言い渡されます。判決に不服がある場合には、上級の裁判所に審理のやり直しを求める控訴や上告の手続きが認められており、有罪判決が確定すると刑が執行されます。
有罪判決で刑が言い渡される際には、執行猶予つきの判決となる場合もあります。執行猶予とは、ただちに刑を執行せず、一定期間その執行を先延ばしにする制度です。
なお、日本では立証が困難な事件は、あらかじめ不起訴にされる傾向が非常に強いこともあり、正式起訴された場合の有罪率は99.9%以上となっています。
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2. 逮捕の種類ごとの流れ
前述のとおり、逮捕には通常逮捕、現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)、緊急逮捕の3種類が存在し、主に「逮捕状の有無やタイミング」「逮捕できる人」「成立するための要件」などの点で違いがあります。
しかし、捜査機関側の手続きには違いがあるものの、被疑者の視点で見ると、身体拘束を受けることや手続きの流れに大きな差はありません。それぞれの逮捕について、以下で詳しく解説します。
2-1. 通常逮捕
通常逮捕は、裁判官があらかじめ発付した「逮捕状」に基づいて行われる、最も原則的な逮捕です。多くは警察官が証拠を集め犯人を特定したあとに、主に早朝に自宅などを訪ねて身柄を拘束するもので、「後日逮捕」とも呼ばれます。
逮捕の要件は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることに加え、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがあると認められることです。
2-2. 現行犯逮捕
現行犯逮捕は、今まさに犯罪を行っている人、あるいは犯罪行為の終わった直後の人を逮捕することです。犯人が明白であり誤認のおそれが低いため、逮捕状なしで逮捕できます。
刑事訴訟法第213条により、警察など捜査機関だけでなく、一般人(私人)でも逮捕することが可能です。ただし私人が現行犯逮捕した場合には、ただちに警察官や検察官に被疑者を引き渡さなければなりません。
また、犯行から多少時間が経過していたとしても「追跡できている」「盗品や凶器を所持している」といった客観的状況がそろい、犯罪を行ってから間がないと明らかに認められる犯人は、準現行犯として現行犯と同様に逮捕状なしで逮捕できます。
通常逮捕と同じく、現行犯逮捕でも証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれが逮捕要件になるため、引き渡し先の警察署などで、要件を満たさないとして身柄を解放されることもあります。
2-3. 緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の重大事件を犯したと疑う十分な理由がある場合で、令状を待っている間に逃げられる可能性などがあって急を要するときに、逮捕状がないまま行われる逮捕です。
一定の重大事件とは、死刑または無期もしくは長期3年以上の拘禁刑にあたる罪とされています。なお、拘禁刑とはかつて懲役刑や禁錮(禁固)刑と呼ばれていた刑を一本化したもので、一定期間刑務所に入る刑を指します。
緊急逮捕した場合には、逮捕後すぐに裁判官に逮捕状を求める手続きをする必要があり、逮捕状が発せられなかったときは、すぐに被疑者は釈放されます。なお、緊急逮捕はあくまで緊急性に鑑みて逮捕状なしで逮捕できる手続きであるため、現行犯逮捕と異なり、一般人が緊急逮捕をすることはできません。
3. 「もしかして逮捕されるかも」 逮捕を回避するためにできること
罪を犯した際に逮捕を避ける方法として主にできることは、逮捕要件である逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを、警察官や検察官に客観的に示すことです。
そのためにできる活動としては、被害者がいる事件では、被害者との間で示談を締結することが挙げられます。また、まだ警察が事件を把握していない、あるいは犯人を特定していない段階の事件であれば、自首をして自ら進んで捜査に協力する姿勢を示すことなどがあります。
しかし、こうした活動を自分だけで行うことは簡単ではありません。逮捕を避けるためには、専門性の高い弁護士に早急に相談をし、今後の方針を定め、実際に動いてもらうことが最も重要です。弁護士であれば、現在の状況から逮捕の可能性を判断し、捜査機関に対して逮捕の必要性がないことを主張する意見書を提出することなどもできます。
4. 在宅事件になれば、拘束はされない
在宅事件とは、逮捕や勾留されずに、あるいはいったん勾留されても釈放されたあとに、自宅での生活を送りながら刑事手続きが進められる事件を指します。家族との生活や勤務先への通勤も通常どおり行うことができ、日常生活に特段の不都合がないため、逮捕や勾留される身柄事件とは大きな差があります。
在宅事件として扱われるためには、次の2つの条件を満たしている必要があります。一つは「比較的犯罪が軽微なこと」、もう一つは逮捕要件である「逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがない」と判断されることです。
軽微な犯罪でも、何度も繰り返している人や反省していない人、住所不定で無職の人などは、勾留されやすくなります。
また、在宅事件となった場合でも、警察や検察からの取り調べの呼び出しに正当な理由なく応じない場合には、逃亡のおそれがあるとみなされ、あとから身柄事件に切り替えられて逮捕される可能性もあります。
身柄事件は起訴不起訴の処分決定までの期間が決められていますが、在宅事件は期間の制限がないため、事件が長期化しやすい傾向にあります。そのため、甘く考えたり気が緩んだりすることで、弁護人選任や示談交渉などが遅くなり、かえって最終的な処分が重くなるおそれもあります。在宅事件でも油断せず弁護士へ相談することをお勧めします。
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5. 逮捕されたあと、釈放されるのはいつ? 早期釈放のポイントは?
逮捕後に釈放されるタイミングや、早期釈放のために重要なポイントについて解説します。
5-1. 微罪処分で釈放(逮捕後48時間以内)
微罪処分とは「警察だけで事件を終了させること」を指します。微罪処分による釈放は、被害が軽微であるうえ、初犯の場合や被害者との示談が成立している場合に、逮捕から48時間以内に警察官の判断で身柄を解放する制度です。厳重注意、指紋採取、写真撮影は行われますが、送検されずに事件が終結するため、前科もつきません。
ただし、通常すべての事件を検察官へ送らなければならない全件送致の原則があり、逮捕にいたった案件が微罪処分で終結することは、基本的にはありません。
5-2. 勾留されずに釈放(逮捕後72時間以内)
検察官が勾留請求をしない、または裁判官が検察官の勾留請求を却下した場合、逮捕から72時間(3日)以内に釈放されます。釈放される理由としては、逃亡や証拠隠滅のおそれがない、罪が軽微、または示談が成立したことなどが挙げられます。ただし、釈放後も事件の捜査は引き続き行われるため、あとから起訴される可能性はあります。
弁護士に依頼をすると、勾留請求を阻止するために、検察官に勾留要件を満たさないことを伝え、身柄の解放を求めます。また、勾留請求された場合は、勾留決定の権限を持つ裁判官に、勾留の必要がないことを具体的に説明します。
逮捕された場合、勾留されるかどうかで身体拘束の期間が大きく変わりますが、法務省による『令和7年版犯罪白書』の「第二編 犯罪者の処遇」などによると、逮捕された人の9割以上が勾留を請求され、そのなかの96%が実際に勾留されているのが実態です。
罪を犯して逮捕された場合には、勾留を免れることが非常に重要になるため、早期に弁護士へ相談や依頼をしましょう。
5-3. 勾留に対する準抗告が認められて釈放(勾留期間中)
「準抗告」とは、裁判官が下した決定に対して、裁判所に不服を申し立てることです。勾留に対する準抗告とは、裁判官が出した勾留決定を破棄するよう求める手続きを言います。勾留決定が不当であると認めてもらうために、勾留の要件を満たしていないことを訴える必要があります。
早期に申立てを行うことも含め、ハードルが高い手続きではありますが、弁護士を通して準抗告を行うことで主張が認められ、勾留決定が破棄される可能性があります。
5-4. 略式起訴または不起訴により釈放(勾留後20日以内)
捜査の結果をふまえ、検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかの判断を、通常10日から20日という勾留の満期までに決定します。
検察官が被疑者を起訴すべきでない、または起訴する必要がないと判断すれば不起訴処分となり、不起訴処分が決定した時点で被疑者は釈放されます。不起訴処分は、被疑者を刑事裁判にかけない判断であるため前科はつかず、実質的には無罪と同じ扱いになります。ただし、犯罪の嫌疑をかけられた経歴を指す「前歴」はつきます。
被害者との示談成立や、取り調べへの適切な対応などが不起訴処分を得るための重要なポイントとなるため、経験豊富な弁護士に対応の相談をすべきです。なお、仮に被害者による告訴なしに起訴できる非親告罪であっても、被害者が許している事実は検察官の判断に強く影響するため、示談の成立は重要です。
弁護士を通じて、証拠の不十分さや起訴を猶予すべき理由をまとめた意見書を検察官に提出し、法的な観点から不起訴を働きかけることも重要です。
また、検察官が被疑者を起訴する場合、略式起訴と正式起訴(公判請求)のいずれかの方法があります。略式起訴とは正式な裁判手続きを省略する手続きです。書面による簡易的な裁判で即日判決を言い渡す方法で、いわゆる罰金刑です。略式起訴の場合は、被疑者は罰金または科料を支払えばその日に釈放となりますが、略式起訴も刑事裁判であるため、前科になります。
なお、罰金が支払えない場合は「労役場留置」となります。これは、1日5000円の日当に換算した期間、刑務所内の労役場で強制労働に従事することで、未払いの金額分を支払いに代えます。労役場に行かなくて済むように、罰金の支払いについても弁護士としっかり相談のうえ、対応することが重要です。
5-5. 起訴後の保釈
起訴後は保釈請求を行うことができます。保釈とは、起訴後の被告人が保釈金の納付などを条件に身体拘束から解放される制度です。保釈には「権利保釈」「裁量保釈」「義務的保釈」の3種類がありますが、一般的に弁護士を通じて請求するのは、「権利保釈」と「裁量保釈」になります。
権利保釈は、原則として除外事由がない限り、権利として保釈が認められると定められているものですが、実際には、重罪、証拠隠滅や逃亡のおそれ、住所不定など一定の除外事由に該当するとして却下され、審査を要することがほとんどです。
一方、権利保釈の除外事由に該当する場合でも、身体拘束の不利益や健康状態、事件の性質などを考慮し、裁判官の職権で判断されるのが裁量保釈です。権利保釈が認められない場合でも、裁量保釈によって保釈が認められることがあります。
弁護士に家族や職場につないでもらうなどして働きかけてもらい、裁判所が懸念する「証拠隠滅や逃亡のおそれ」がないことを客観的な資料を用いて論理的に主張してもらうことで、保釈が認められる可能性は高まります。
なお、保釈金の納付が難しい場合には、専門の支援団体が一時的に保釈金を立て替えてくれる制度などもあるため、その点も弁護人に相談するとよいでしょう。
5-6. 無罪判決または執行猶予つき判決で釈放
刑事裁判で無罪判決または執行猶予つきの有罪判決が言い渡されると、身柄を拘束されていた被告人はただちに釈放されます。執行猶予期間中に新たな罪を犯さず無事に過ごせば、言い渡された刑の効力が消滅し、刑務所に行く必要がなくなります。なお、執行猶予つきであっても有罪判決が確定した時点で、前科として記録されます。
ただし、執行猶予期間中に再び犯罪を行い、有罪判決で拘禁刑以上の刑が確定した場合は、執行猶予が取り消され、「新たな刑」に加えて「猶予されていた前の刑」も合算した期間、刑務所で服役することになります。
5-7. 刑期を終えて釈放
刑期満了による釈放は、拘禁刑の期間をすべて終えて刑務所から出所する制度で、出所後は生活制限もありません。
また、刑期の満了前であっても、一定の条件を満たした受刑者を仮に釈放し、社会復帰を促す仮釈放という制度もあります。仮釈放は、刑期の3分の1以上(無期刑では10年)を経過し、反省と更生が見込まれる場合に認められ、残りの刑期は保護観察官の監督を受けながら制限つきで生活します。
6. 事件が起きてから逮捕されるまでの期間は?
事件発生から逮捕までの期間は、事件の性質や証拠により異なります。現行犯でない場合、捜査を経て逮捕状が発付されたあとに逮捕されるため、犯罪行為をしてから数日から数週間で逮捕されることもあれば、数カ月から数年後に逮捕される可能性もあります。
被害届の提出が早く、証拠がそろいやすい場合には数日で逮捕されることもありますが、被害届の提出が遅れたり、捜査に時間がかかったりするケースでは数年後に突然逮捕されることも十分にあり得ます。そのため、ある程度期間が経過したからといって、逮捕されるリスクが完全には消えるわけではありません。
ただし、刑事手続きでは、犯罪が終わってから一定の期間が経過することで、検察官がその事件を起訴できなくなる「公訴時効」という制度があります。時効期間が過ぎれば逮捕されることはなくなるため、永久に逮捕の可能性があるわけではありません。なお、時効の長さは法律で定められた刑の重さによって決まり「人を死亡させた罪で死刑にあたるもの」については公訴時効が廃止されています。
しかし、逮捕されるタイミングに決まったルールはないため、公訴時効を経過しない限りは、いつ逮捕されてもおかしくありません。
7. 逮捕による仕事や生活への影響は? どんなリスクがある?
逮捕され、さらに勾留までされると、最大23日間身体拘束されます。その期間は日常生活が制限されるため、さまざまな弊害が起こります。逮捕によって引き起こされる可能性があるリスクは以下のとおりです。
7-1. 前科や前歴がつく
前科は「裁判で罰金以上の有罪判決を受けた過去」、前歴は「警察や検察の捜査対象となり逮捕や取り調べを受けた過去」を指します。
前科がつくと、生活に以下のような影響が出ます。
特定の職業では刑罰によって資格や免許の取得や維持が困難になる
国によってはビザ申請時に犯罪経歴証明書が必要となり、海外渡航の際に入国の拒否や制限をされる
再び罪を犯した場合に「再犯の可能性が高い」と判断されより厳しい処分が下る
一方、前歴は「捜査機関に疑われた事実」であり、不起訴処分になれば直接的な法的不利益はほぼありません。そのため、早期に弁護士に依頼し、示談交渉など不起訴に向けた活動を進めてもらうことが非常に重要になります。
7-2. 起訴され、有罪になる|刑務所に入ることも
日本の刑事裁判においては、起訴された場合の有罪率は約99.9%ときわめて高く、執行猶予や罰金を含む有罪判決を受けると、法的に前科として記録されます。特に実刑判決となった場合には、ただちに刑務所へ収容されるため、その社会的影響は計り知れません。
7-3. 勤務先を解雇される|再就職が難しくなることも
資格や免許の取得や維持が困難になる特定の職業以外であれば、前科があるだけで直ちに解雇されるわけではありません。しかし、就業規則で「有罪判決は解雇事由にあたる」などと定められている場合は、懲戒解雇となる可能性が高くなります。
また、特に実刑判決などの前科を隠して入社していた場合には、賞罰欄に虚偽の申告をした告知義務違反にあたるとして就業規則に抵触し、解雇の理由となることもあります。
逮捕を理由に前職を懲戒解雇されていた場合、再就職の際にその事実を企業側に知られると、採用で不利になる可能性もあります。法的な有効性は別としても、逮捕歴があることで仕事や就職で大きな不利益を受ける可能性が高いのが実情です。
7-4. 家族関係や家族の日常生活に影響が出る
逮捕や勾留をされた場合、逮捕されたことを同居の家族に隠し通すことは非常に困難です。突然連絡がとれなくなったことで家族が警察に連絡し、逮捕が発覚するといったケースもあります。犯罪の内容によっては、家族に不信感を持たれ家族関係が崩れてしまうことも少なくありません。
また、身柄拘束中は働けなくなるため、収入が減少して生活が苦しくなることもあります。さらに、逮捕されたことが家族の職場や学校にも知られ、強い心理的ストレスを受け、引っ越しや転校などを余儀なくされることもあるかもしれません。原則として、家族に法的な不利益が及ぶことはありませんが、配偶者や子どもの社会生活にも悪影響を及ぼす場合が多くあります。
7-5. 実名報道が行われる
逮捕時の実名報道は、マスコミやネット上で氏名が公表され、解雇、再就職困難、家族への誹謗中傷や嫌がらせといった重大なデメリットをもたらす可能性を含んでいます。たとえ無罪や不起訴になっても、風評被害が残り、日常生活や社会復帰に長期的な支障が出るケースも少なくありません。
実名報道を避けるには、とにかく早期に弁護士へ依頼し、逮捕や勾留をされない在宅事件に切り替えることや、被害者との示談成立により被害届を取り下げてもらうことが有効です。
8. 逮捕について弁護士に相談や依頼するメリット
逮捕された場合や逮捕を避けたいときは、まずは弁護士への相談をお勧めします。早急な弁護士への依頼によって得られるメリットとしては、以下の点が挙げられます。
8-1. 逮捕回避や早期釈放、不起訴をめざした弁護活動をしてもらえる
傷害や窃盗、痴漢など、被害者のいる事件では、逮捕前に示談を成立させることがきわめて有効です。弁護士が示談交渉に早期に着手することで、逮捕される可能性は大幅に低くなります。筆者の事務所でも実際に、逮捕前に示談を成立させ、被害者が被害届を取り下げたことで、逮捕を免れたケースが多くあります。
また、事件が警察に発覚する前、あるいは発覚していても逮捕状が出る前であれば、弁護士が自首に同行し、有利な供述調書が作成されるサポートをすることで、逮捕を回避できるケースも多くあります。これらの活動は、逮捕回避と併せて不起訴処分を得るためにも非常に重要です。
ほかにも、家族などを身元引受人として立て、逃亡のおそれがないことを記した書面を警察に提出することや、不利な調書を取られないための取り調べの対応アドバイスをするなど、弁護士はさまざまな活動によって、逮捕や起訴を避ける手助けをします。
8-2. 接見禁止処分が行われている場合も、家族と本人をつなぐ役割を担ってもらえる
逮捕直後の最長72時間は、家族であってもほとんどの場合は面会が認められません。この期間に面会ができるのは弁護士のみです。また、勾留後も接見禁止処分がつくと、家族は会うことができません。
長期に家族と連絡がとれないことで、被疑者本人と家族の双方が不安や強いストレスを抱え、家族関係が悪化し、仕事や生活に関する事項も満足に伝えることができない状況が続きます。
そのような場合に、弁護士が被疑者と家族を仲介し、細やかな伝達を行うことで、家族や仕事のトラブルを避けられます。また、接見禁止処分解除の活動を行うことで、勾留後の家族との面会を可能にします。
8-3. 起訴された場合も、保釈請求や公判手続きでの弁護活動を任せられる
逮捕直後から同じ弁護士に依頼していれば、事件の経緯や本人の性格を熟知しているため、起訴後も一貫した方針でスムーズに活動を継続できる強みがあります。
起訴された場合も、事前に家族と連絡をとり準備を進めることで、起訴直後に最短での保釈請求を行うことも可能です。起訴前から継続して弁護士に依頼することは、身柄の解放と判決内容の両面で、きわめて大きなメリットがあります。
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9. 逮捕されたあとに弁護士を呼ぶ方法|刑事弁護に強い弁護士の探し方
逮捕後に被疑者が呼べる弁護士は、選任や依頼の方法によって、当番弁護士、国選弁護人、私選弁護人の3つがあります。
9-1. 当番弁護士
当番弁護士とは、逮捕された人が警察官などを通じて弁護士会に連絡し、一度だけ弁護士会から無料で派遣してもらえる弁護士のことです。弁護士会の名簿に基づき、その日の担当弁護士が派遣されるため、弁護士を選ぶことはできません。
逮捕直後の不安を取り除いてもらうことや、今後の手続きや取り調べのアドバイスをもらうことはできますが、あくまで1回きりの派遣が原則で、刑事事件への専門性もさまざまです。なお、当番弁護士に継続して弁護活動を依頼したい場合は、その当番弁護士を私選弁護人として依頼することが可能です。
9-2. 国選弁護人
国選弁護人とは、経済的な理由で弁護士費用を払えない被疑者のために、国が代わりに費用を負担し選任する弁護士です。そのため、現金や流動資産の合計資力が50万円以下でなければ利用できません。
原則として、依頼できるのは逮捕後の勾留が決まってからであるため、逮捕直後のサポートは対象外となります。また、国が名簿から機械的に選任するため、刑事事件の経験や熱意、人柄、弁護方針などは選任された弁護士次第であり、不満があっても原則として解任や変更ができません。
9-3. 私選弁護人
私選弁護人とは、被疑者自身や被疑者の家族が、自由に選んで直接依頼する弁護士のことです。被疑者自身が選べるため、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士や、信頼できる弁護士に依頼することができます。
また、逮捕される前から弁護士に相談や依頼をすることも可能なため、逮捕後すぐに事態を把握し、活動できるのも利点です。弁護士費用は被疑者の負担となり、一般的には逮捕後に弁護士を呼ぶ場合にも日当がかかります。
当番弁護士と国選弁護人は、自分で弁護士を選ぶことができず、また、当番弁護士は逮捕後1回限りの相談のみ、国選弁護人は勾留後からの依頼となるため、早期の必要十分な活動にはそれぞれ制限があります。可能であれば、最も早くかつ継続的なサポートを受けられる私選弁護人に依頼することをお勧めします。
刑事事件に強い弁護士や、自身の事件内容の分野に詳しい弁護士を選ぶことで、より専門的なサポートを期待できます。また、逮捕される前から依頼できるため、早期の弁護活動により、逮捕の回避や早期の釈放、不起訴処分の獲得などをめざせる可能性が高まります。
私選弁護人を探す場合には、ネット検索やポータルサイトの活用が有効です。特に、ポータルサイトは事案ごとに特化していて、一度に多くの弁護士を比べられる点で便利です。
被疑者本人が逮捕され、外部と連絡がとれない状況では、本人に弁護士との接点がない限り私選弁護人を選ぶことは難しいため、家族の判断で早期に弁護士をつけることが重要です。
10. 逮捕後の流れに関してよくある質問
Q. 逮捕されたらスマホや財布などの所持品はどうなる?
逮捕された場合、スマホや財布などの所持品は警察に一時的に預けられることになりますが、その扱いはそれが証拠品かどうかによって大きく異なります。たとえば、スマホは証拠品でなければ釈放時に返却されますが、証拠品の場合は警察の必要な捜査が終了するまで返却されません。
Q. 逮捕されたあと、いつ弁護士を呼ぶのがよい?
できる限り早く弁護士に連絡すべきです。取り調べで不利な供述をするリスクを低減するだけでなく、早期釈放や勾留回避に向けての活動、家族や勤務先への連絡調整、被害者との示談交渉など、逮捕後に弁護士が早期に行うべきことは多くあります。
Q. 逮捕された本人の家族は、すぐに面会できる?
家族は、逮捕後約3日間(最大72時間)は、原則として面会が認められないケースがほとんどで、面会できるようになるのは、勾留に移行したあとになります。ただし、勾留に移行しても、接見禁止処分が出ている場合は面会できないため、接見禁止解除の活動を弁護士に依頼する、弁護士を通じてやりとりするといった依頼が必要です。
Q. 逮捕されると、何日間身柄を拘束される?
事案によって異なります。逮捕による拘束期間は最大72時間ですが、勾留に移行すると最大20日間拘束され、起訴されるとさらに長期化することもあります。
Q. 逮捕されると必ず前科がつく?
逮捕されても、起訴されて有罪判決が確定しない限り前科はつきません。実際には不起訴となるケースも多くあるため、前科がつかないよう、弁護士に支援を依頼することが重要です。
11. まとめ 逮捕前や直後から弁護士に相談することが解決の近道に
もし逮捕された場合、逮捕後わずか72時間で、身体拘束が継続されるか釈放されるかという、その後の人生が大きく左右される重大な判断がなされます。
それに対し、刑事手続きや法律に精通していない状況で、自ら対処することは大変困難です。逮捕されたらすぐに弁護士に相談し、弁護士の協力のもと、早期釈放や不起訴をめざして活動することが非常に重要になります。
逮捕前であっても、専門性の高い弁護士に相談することで、今後の見通しや方針を事前に確認することができ、逮捕や起訴を回避するための活動もしてもらうことができます。罪を犯してしまったら、なるべく早期に弁護士に相談することが解決への近道です。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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