目 次
朝日新聞社運営「刑事弁護の道しるべ」で
加害者弁護に強い弁護士を探す
加害者弁護に強い
弁護士を探す
1. 強制わいせつ罪とは?|2023年法改正で「不同意わいせつ罪」に
かつての刑法では、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすると「強制わいせつ罪」によって処罰されました。ただし、2023年7月13日に施行された改正刑法により、同日以降の行為については「不同意わいせつ罪」が適用されます。
1-1. 強制わいせつ罪=暴行や脅迫を用いて、わいせつな行為を行う罪(2023年7月12日まで)
「強制わいせつ罪」とは、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(旧刑法176条)。法定刑は「6カ月以上10年以下の懲役」とされていました。
無理やりわいせつな行為を受けると、性的な事項について自己決定をする自由(=性的自由)が害されてしまいます。そのため、かつての刑法では強制わいせつ罪を設け、暴行や脅迫を用いたわいせつな行為を厳しく罰するものとしていました。
1-2. 2023年7月13日以降は「不同意わいせつ罪」が適用される
2023年7月13日に改正刑法が施行され、強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」(刑法176条)へと変更されました。
犯罪については「遡及(そきゅう)処罰の禁止」(日本国憲法39条)が徹底されているため、犯罪行為がなされた時点の法律が適用されます。そのため、2023年7月12日以前の行為には強制わいせつ罪、2023年7月13日以降の行為には不同意わいせつ罪が適用されることになります。
2. 強制わいせつ罪の構成要件
強制わいせつ罪は、次の構成要件をいずれも満たす行為について成立します(2023年7月12日以前の行為に限る)。
・わいせつな行為
・反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫
ただし相手が13歳未満の場合は、暴行・脅迫をしていなくても強制わいせつ罪が成立します。
2-1. わいせつな行為
「わいせつな行為」とは、本人の性的羞恥心(しゅうちしん)の対象となるような行為を指します。たとえば、次のような行為が該当します。
乳房や陰部など身体の一部に、性的な意図や方法で触れる
キスをする
自分の陰部を触らせる
裸にして写真を撮影する
ただし、性交・肛門性交・口腔性交は強制性交等罪(旧刑法177条)の対象とされているため、強制わいせつ罪の対象からは除外されます。
2-2. 反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫
強制わいせつ罪が成立するためには、わいせつな行為を強要する手段として、相手の反抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫を加える必要があります。たとえば、次のような手段を用いた場合が該当します。
力づくで無理やり押さえつけた
抵抗しようとする相手を殴った
ナイフを構えて「抵抗したら殺すぞ」と脅した
2-3. 相手が13歳未満の場合は、暴行・脅迫をしていなくても強制わいせつ罪が成立する
相手が13歳未満の場合は、暴行や脅迫を用いたか否かにかかわらず、わいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪が成立します。
年少者は、性的な事項について十分な判断能力を備えていないと考えられます。そのため、旧刑法では「性交同意年齢」(=性的な事項について有効に同意する判断能力を有する年齢)を13歳以上とし、それに達していない者に対するわいせつな行為を一律に処罰の対象としていました。
なお、現行刑法における不同意わいせつ罪では、性交同意年齢が16歳に引き上げられています。
3. 相手の年齢を誤信していた場合の取り扱い
強制わいせつ罪は、構成要件該当事実についての故意(=認識・予見)がなければ成立しません。そのため、行為者が相手の年齢を誤信していた場合で、かつ暴行や脅迫を用いることなくわいせつな行為をしたケースで問題となります。
行為者が13歳以上の相手を13歳未満であると誤信していた場合、強制わいせつ罪の故意は認められます。これは「13歳未満の相手にわいせつな行為をする」という認識があるためです。しかし実際は、相手は13歳以上であるため、強制わいせつ罪の構成要件を満たしていません。この場合、未遂罪(旧刑法180条)が成立すると解されています。
一方、行為者が13歳未満の相手を13歳以上であると誤信していた場合、暴行や脅迫を用いていなければ、わいせつな行為をしても強制わいせつ罪は成立しません。13歳未満であるという認識(故意)がないためです。
「13歳以上だと思っていた」という行為者の供述の信憑性は、相手の外見、会話内容、行為前後の挙動などを踏まえて総合的に判断されます。
4. 準強制わいせつ罪とは?
旧刑法では、強制わいせつ罪を補充・拡張するものとして「準強制わいせつ罪」が定められていました。
「準強制わいせつ罪」は、人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、またはその状態にさせてわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(旧刑法178条1項)。刑罰は強制わいせつ罪と同じく「6カ月以上10年以下の懲役」とされています。
【心神喪失】
意識喪失や高度の精神障害などにより、自己に対してわいせつな行為が行われることの認識を欠く状態です。睡眠、泥酔、気絶、薬物中毒などの状態が該当します。
【抗拒不能】
物理的または心理的に、わいせつ行為に対して抵抗するのが著しく困難な状態をいいます。たとえば次のような状態が該当します。
・手足を縛られている
・暗闇で相手を恋人だと勘違いしている
・治療のために必要だと騙されている
朝日新聞社運営「刑事弁護の道しるべ」
5. 強制わいせつ罪と不同意わいせつ罪はどう違う?
2023年7月13日に改正刑法が施行され、従来の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪は「不同意わいせつ罪」に統合されました。同日以降の行為には不同意わいせつ罪が適用されます。
以下では、旧刑法の強制わいせつ罪と、現行刑法の不同意わいせつ罪の違いを解説します。
5-1. 不同意わいせつ罪は、暴行・脅迫以外の方法を用いた場合も成立する
「不同意わいせつ罪」は、次に挙げる行為により、または次に挙げる被害者の状態に乗じてわいせつな行為をした場合に成立します。
【不同意を困難にさせる行為】
・暴行、脅迫
・心身の障害を生じさせること
・アルコールまたは薬物を摂取させること
・睡眠など、意識が明瞭でない状態にさせること
・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、または驚愕(きょうがく)させること
・虐待に起因する心理的反応を生じさせること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること
・その他、上記に類する行為
【不同意が困難である被害者の状態】
・暴行、脅迫を受けたこと
・心身の障害があること
・アルコールまたは薬物の影響があること
・睡眠など、意識が明瞭でない状態にあること
・同意しない意思を形成、表明、全うするいとまがないこと
・予想と異なる事態に直面させて恐怖し、または驚愕していること
・虐待に起因する心理的反応があること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること
・その他、上記に類する事由
不同意わいせつ罪の大きな特徴は、相手にわいせつな行為を強要する手段が幅広く処罰の対象とされている点です。暴行・脅迫(強制わいせつ罪)と心神喪失・抗拒不能(準強制わいせつ罪)を利用した行為が処罰の対象とされていた旧刑法よりも、実質的に処罰の範囲が拡大したと考えられます。
5-2. 不同意わいせつ罪は、相手の誤信や人違いを利用した場合も成立する
不同意わいせつ罪は、行為がわいせつなものでないと相手に誤信させたり、もしくは相手に人違いをさせたりして、わいせつな行為をした場合にも成立します。以下に例を挙げます。
暗闇で恋人だと勘違いさせた(相手が勘違いしている状態を利用した)
治療のために必要だと騙した(相手が騙されている状態を利用した)
旧刑法でも、上記の行為には準強制わいせつ罪が成立する余地があると考えられますが、不同意わいせつ罪ではそれを明文化した形となります。
5-3. 不同意わいせつ罪の性交同意年齢は、原則として16歳以上
旧刑法の強制わいせつ罪では性交同意年齢が13歳以上とされていました。しかし、現行刑法では性交同意年齢が「16歳」に引き上げられました。相手が16歳未満の場合は、わいせつな行為をすることについて相手が同意していても、原則として不同意わいせつ罪が成立します。
ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、5歳以上年長の者が行為者である場合に限ります。年齢差が5歳未満の場合は、通常の不同意わいせつ罪の要件に従います。
5-4. 公訴時効は7年から12年に延長
2023年7月13日の改正刑法の施行と併せて、2023年6月23日付で改正刑事訴訟法が施行されました。これにより、性犯罪の公訴時効期間(=経過すると起訴されなくなる期間)が延長されています。
改正刑事訴訟法の施行前は、強制わいせつ罪の公訴時効期間は7年とされていましたが、改正法の施行後は12年とされました。また、犯罪行為が終わった時に被害者が18歳未満である場合は、18歳に達した時から12年をカウントするものとされました。
上記の公訴時効期間に関する改正は、改正刑事訴訟法の施行までに公訴時効が完成していない強制わいせつ罪についても適用されます。たとえば、2020年4月1日に強制わいせつ罪に当たる行為をした場合は、現行刑事訴訟法に基づき、公訴時効の完成日は2032年4月1日になった時となります。
6. 強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)で逮捕された場合のリスク
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪で逮捕されると、その事実が報道されるなどして社会的信用を失ってしまうおそれがあります。勤務先を解雇される可能性もあり、再就職が難しくなる場合もあります。
また、家族にも多大な迷惑をかけることになります。家族の信用を失えば、離婚を迫られるなど家庭崩壊に繋がってしまうかもしれません。
不同意わいせつ罪は重大な犯罪なので、逮捕後に起訴される可能性も高いと考えられます。起訴されるとほとんどの場合は有罪となり、刑罰が科されて前科もついてしまいます。
このようなリスクを避けるためには、相手の明確な同意がないのにわいせつな行為をしないよう徹底しなければなりません。もし警察に強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪を疑われたら、すぐに弁護士へ相談してください。
7. 強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)で逮捕された後の刑事手続きの流れ
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪で逮捕された場合、その後は次のような刑事手続きが進みます。
7-1. 逮捕~送検
逮捕された被疑者は、警察官の取り調べを受けます。被疑者には黙秘権があるので、取り調べに対しては答えても答えなくても構いません。警察官は逮捕後48時間以内に、被疑者と書類および証拠物を検察官に送致します。
送致された後、被疑者は検察官の取り調べを受けます。なおこの段階では、被疑者とは弁護士しか面会できません。家族などが面会できるようになるのは、逮捕から起訴前勾留に移行した後からです。
7-2. 勾留請求
逮捕による身柄拘束は最長72時間です。検察官は、引き続き被疑者の身柄を拘束すべきと判断した場合は、裁判官に対して勾留を請求します。勾留請求の期限は、検察官が被疑者を受け取ってから24時間以内かつ逮捕後72時間以内です。
被疑者の住居が不定であるか、または罪証隠滅や逃亡のおそれがあり、かつ必要性が認められるときは、裁判官は勾留状を発します。勾留状が発せられた場合は起訴前勾留に移行し、発せられなかった場合は釈放となります。
7-3. 起訴前勾留
起訴前勾留の期間は最長20日間で、逮捕と通算すると最長23日間です。被疑者は引き続き、警察官と検察官の取り調べを受けます。
起訴前勾留への移行後は、原則として家族も被疑者と面会できるようになります。ただし、接見禁止処分が行われている場合は、解除されるまで弁護士しか面会できません。
起訴前勾留については、裁判官に対して「準抗告」という異議申立てを行うことができます。勾留の理由または必要性がないことが裁判官に認められると、勾留が取り消されて被疑者は釈放されます。
7-4. 起訴・不起訴
検察官は、原則として起訴前勾留の期間が満了するまでに、被疑者を起訴するかどうか判断します。
検察官が被疑者を起訴するのは、犯罪を確実に立証できる見込みがあり、かつ刑罰を科すのが相当と判断した場合です。次のような事情がある場合は、不起訴となる余地があります。
別に真犯人がいる可能性が否定できない
性的な行為をすることにつき、相手が同意していた可能性が否定できない
比較的軽微な事案で、被疑者が十分に反省しており、被害者との間でも示談が成立している
不起訴となった場合、被疑者は釈放されて刑事手続きが終了します。刑罰は科されず、前科もつきません。起訴された場合は、起訴後勾留に移行します。
7-5. 起訴後勾留
検察官に起訴された場合、被疑者の呼称は「被告人」へと変わり、引き続き身柄が拘束されます(=起訴後勾留)。起訴後勾留への移行後は、裁判所に対して保釈を請求できるようになります。保釈が認められたときは、保釈保証金を預ければ身柄拘束が一時的に解かれます。
起訴後勾留の期間中は、弁護人(弁護士)と協力して、公判手続きに向けた準備を整えましょう。
7-6. 公判手続き(刑事裁判)
起訴されてから1カ月程度を目安に、裁判所で公判手続き(刑事裁判)が実施されます。公判手続きでは、検察官による犯罪事実の立証や、被害者に対する証人尋問、被告人に対する質問などが行われます。
審理が熟した段階で、裁判所が判決を言い渡します。判決内容に不服があるときは、一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告をすることができます。
7-7. 判決の確定・刑の執行
控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、有罪なら刑が執行されます。ただし執行猶予が付された場合は、判決主文で示された期間、刑の執行が猶予されます。
8. 強制わいせつ(不同意わいせつ)を疑われたときの対処法|有罪や前科を回避するためのポイント
警察に強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪を疑われているときは、起訴を避けるために次の対応を検討してください。
8-1. 被害者との示談を試みる
被害者との示談が成立し、被害弁償を行っていれば、処罰の必要性が低くなったと検察官が判断し、不起訴となる可能性があります。
示談成立に向けては、まず被害者の連絡先を把握する必要があります。連絡先を知らない場合は、警察官に聞いてみましょう。被害者の同意を得られた場合に限り、連絡先を教えてもらえる場合があります。
ただし、被疑者自身が被害者に連絡しても「話したくない」などと拒否されるケースが多いので、弁護士を通じて連絡するのが一般的です。
8-2. 警察官や検察官の取り調べには真摯(しんし)に協力する
罪を犯したことが事実である場合は、警察官や検察官の取り調べには真摯に協力した方がよいでしょう。捜査への協力が反省の表れと評価され、起訴を避けられる可能性があります。
ただし、嫌疑の内容が事実と異なる場合などには、黙秘した方がいいケースもあります。弁護人と相談して、取り調べに対してどのような方針で臨むかを適切に判断してください。
8-3. 早い段階で弁護士に刑事弁護を依頼する
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪での起訴・処罰を避けるためには、早い段階で弁護士に相談することが大切です。刑事事件の弁護活動は、始める時期が早いほど対応の選択肢が広がります。被害者との示談が成立する可能性も高くなり、不起訴処分になる確率も高まります。
朝日新聞社運営「刑事弁護の道しるべ」
9. 強制わいせつ(不同意わいせつ)の弁護士費用はいくら?
勾留された被疑者は、資力が一定水準以下なら公費で国選弁護人を選任してもらえます。この場合、弁護士費用の負担は発生しません。これに対して、次の場合には私選弁護人の選任が必要です。
被疑者が勾留されていない場合
被疑者の資力が一定水準を超えている場合
自分で選んだ弁護士に依頼したい場合
私選弁護人の費用は、依頼先の法律事務所(弁護士)によって異なります。目安額はおおむね次のとおりですが、必ず依頼前に見積もりを確認してください。
着手金 (契約時に支払う) | 20万円~50万円程度 |
|---|---|
報酬金 (依頼終了時に支払う) | 20万円~50万円程度 ※不起訴または略式起訴となった場合、 執行猶予が付された場合などに発生します。 |
10. 強制わいせつ(不同意わいせつ)についてよくある質問
Q. 暴行・脅迫をしていない場合、強制わいせつ罪は成立しない?
強制わいせつ罪は原則として、暴行・脅迫によって相手の犯行を著しく困難にしてわいせつな行為をした場合に成立します。
ただし、相手が13歳未満である場合は、暴行・脅迫を用いていなくても強制わいせつ罪が成立します。また、相手の心神喪失や抗拒不能を利用してわいせつな行為をした場合は「準強制わいせつ罪」が成立します。
Q. 相手が被害届を出していなくても、強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)で逮捕されることはある?
強制わいせつ罪および不同意わいせつ罪は親告罪でないため、被害者の告訴や被害届がなされていなくても逮捕される可能性はあります。
Q. 自首すれば罪は軽くなる?
犯罪事実または犯人が捜査機関に発覚する前に自首をすると、刑事裁判において刑が減軽されることがあります(刑法42条1項)。またそれ以前に、自首や反省の態度などが評価されて、不起訴となる可能性も高くなります。
Q. 不起訴になった場合でも、何らかの記録は残る?
捜査機関の内部情報として「前歴(=犯罪捜査の対象となった経歴)」が残りますが、前歴によって直ちに具体的な不利益が生じることはありません。
Q. 行為から数年後に強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)で逮捕されることはある?
公訴時効が完成するまでは、強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪で逮捕される可能性があります。
現行刑事訴訟法では、強制わいせつ罪および不同意わいせつ罪の公訴時効期間は12年とされています。相手が18歳未満の場合、18歳になった時点から12年の期間が進行します。
11. まとめ 強制わいせつ罪(不同意わいせつ罪)を疑われたら早期の弁護士相談が重要
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪で逮捕・起訴されると、社会的信用の喪失や家族関係の崩壊など、さまざまなリスクを負うことになってしまいます。
重い刑事処分を避けるためには、犯罪に心当たりがある段階で、早期に弁護士へ相談することが大切です。被害者との示談交渉や検察官への働きかけなどの弁護活動が、逮捕や起訴の回避につながります。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
朝日新聞社運営「刑事弁護の道しるべ」で
加害者弁護に強い弁護士を探す