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1. 出頭とは? 警察が「出頭要請」を行う理由
「出頭」とは、警察署や裁判所などに自ら出向く行為をいいます。警察や裁判所から呼び出されて出頭する場合と、呼び出されていないものの自主的に出頭する場合があります。警察は、刑事事件の被疑者(=犯人であると疑っている人)に対して出頭要請を行うことがあります。
裁判官から逮捕状を発付してもらえば、警察官は被疑者を逮捕することができます。しかし、逮捕によって身柄を拘束することは、被疑者の生活や立場に大きな悪影響を及ぼすおそれがあります。また、逮捕状の発行には厳しい要件が設けられているので、嫌疑があいまいな段階で逮捕状を請求するわけにはいきません。
犯罪捜査規範99条により、捜査はなるべく任意捜査の方法によって行わなければならないとされています。警察による出頭要請も、いきなり被疑者を逮捕するのではなく、まずは任意捜査の一環として行われます。
2. 出頭と自首の違いは?
出頭と「自首」は混同されることがありますが、両者は異なるものです。
「自首」とは、捜査機関に発覚する前に、犯人が自ら犯罪事実を申告し、刑事処分に服する意思を表示する行為を意味します。通常は、警察署や交番へ自主的に出頭し、その場で自首することになります。
【出頭の事例】
防犯カメラによって警察に特定されたひき逃げの被疑者が、警察から要請を受けて警察署に行った(出頭した)。
【自首の事例】
警察がまだひき逃げの被疑者を特定できていない段階で、犯人が自ら警察署に行き、ひき逃げをしたのは自分だと申告した(自首をした)。
出頭と自首の主な違いは、以下のとおりです。
2-1. 罪を認める必要があるか
出頭は警察署などに行く行為を指すだけで、必ずしも「罪を認める」行為を伴いません。実際には罪を認める場合が多いですが、出頭したうえで罪を否認することもできます。
これに対して、自首の場合は必ず罪を認めることになります。「自首したうえで罪は否認する」ということはあり得ません。
2-2. 法律上の減軽の対象になるか
犯人が自首をした場合は、刑事裁判において刑を減軽できるとされています(刑法42条1項)。これは「法律上の減軽」に当たり、次の要領で行われます(刑法68条)。
元々の刑罰 | 減軽後の刑罰・減軽方法 |
|---|---|
死刑 | 無期または10年以上の拘禁刑 |
無期拘禁刑 | 7年以上の有期拘禁刑 |
有期拘禁刑 | その長期および短期の2分の1を減ずる 例:6カ月以上10年以下の拘禁刑→3カ月以上5年以下の拘禁刑 |
罰金 | その多額および寡額の2分の1を減ずる |
拘留 | その長期の2分の1を減ずる |
科料 | その多額の2分の1を減ずる |
自首とは異なり、出頭をしても上記のような法律上の減軽は認められません。ただし、自発的に出頭した事実が考慮され、不起訴や量刑の軽減につながることはあります。
2-3. できる段階に制限があるか
自首は犯罪事実または犯人の両方が捜査機関に判明していると成立しません。捜査機関が犯罪の発生を把握していないか、または被疑者を特定できていない段階に限り、自首をすることができます。
これに対して出頭は、捜査機関に被疑者として特定されている人でも行うことができます。
3. 罪を犯した人が出頭するメリット・デメリット
罪を犯した人が警察署へ出頭することには、メリットとデメリットの両面があります。出頭すべきかどうか迷っているときは、弁護士に相談してください。
3-1. 出頭のメリット|不起訴や量刑の軽減につながる・在宅事件になる可能性
自首が成立するか否かにかかわらず、警察署へ自ら出頭して罪を認めれば、それは反省や贖罪(しょくざい)の表れと評価されるケースが多いです。軽微な犯罪なら不起訴の可能性が高まるほか、仮に起訴されても重い刑罰を回避しやすくなります。
また、被疑者が自ら警察署に出頭した場合は、逮捕や勾留の要件の一つである「罪証隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」が低下すると考えられます。特に軽微な犯罪なら、被疑者の出頭を踏まえて、逮捕されずに在宅事件として捜査が進められる可能性が高まります。
3-2. 出頭のデメリット|その場で逮捕されるリスクなど
警察署へ自ら出頭しても、必ず逮捕を避けられるわけではありません。ただし、重大な罪を犯した場合などでは、すでに逮捕状が発付されているか、または出頭後直ちに警察官が逮捕状を請求することがあります。このような場合には、出頭したその場で逮捕されてしまうでしょう。
しかし、いずれは逮捕される可能性が高いのであれば、準備ができたタイミングで自ら出頭するのも有力な選択肢です。
4. 警察の出頭要請を無視するとどうなる?逮捕される?
警察から出頭要請を受けても、それに応じる義務はありません。出頭するかどうかは、あくまでも要請を受けた人の任意です。
ただし、警察署への出頭を拒否し続けると、罪証隠滅や逃亡を防ぐ目的で逮捕されることがあります。また、検察官や裁判所に「反省していない」と評価され、起訴されたり、重い刑罰が科されたりする可能性が高まります。
出頭要請を拒否することにはリスクが伴うので、弁護士と相談しながら出頭すべきか判断してください。
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5. 警察署に出頭したら何を聞かれる?拘束時間はどれくらい?
警察署に出頭すると、その場で取り調べが行われることが多いです。警察官から黙秘権について説明された後、犯した罪の内容や事件当日の行動、被害者との関係性などを聞かれます。取り調べに対しては、答えても答えなくても構いません。
取り調べの所要時間は、事案によって異なるので一概に言えません。1回当たり2から3時間程度かかるケースが多いですが、事案が重大である場合や罪を否認している場合などは長引くこともあります。
6. 警察官の要請を受けて出頭する際の流れ
警察から連絡を受けて、それに応じて警察署に出頭する際の流れを解説します。
6-1. 電話や郵便で連絡を受け、指定された日時に警察署へ出頭する
警察官からの出頭要請は、電話や郵便などによって行われます。日時を指定されるので、その日時に警察署へ出頭します。出頭の日時は、警察官に相談すれば変更することもできます。都合が悪い場合や、準備が整っていない場合は、日時の変更を求めましょう。
ただし出頭を先延ばしにし過ぎると、警察官に「出頭する気がない」「逃亡するかもしれない」と判断され、逮捕状を請求されるケースがあるので注意が必要です。
6-2. 警察官の取り調べを受ける
警察署に出頭したら、その場で警察官の取り調べを受けます。犯した罪の内容や事件当日の行動、被害者との関係性などを聞かれますが、黙秘権があるので答えても答えなくても構いません。
6-3. 帰宅する|ただし、その場で逮捕されることもある
警察官の取り調べが終わったら、原則として帰宅できます。ただし、逮捕状が発行されている場合、その場で逮捕されます。逮捕される可能性も想定して、出頭する前に家族へ事情を伝えたり、弁護士に相談したりするなど、事前に準備を整えておきましょう。
7. 出頭した後の刑事手続きの流れ
警察署へ出頭した後の刑事手続きの流れは、逮捕されるかどうかによって大きく変わります。
7-1. 逮捕された場合(身柄事件)の流れ
逮捕・勾留によって被疑者の身柄を拘束する場合は「身柄事件」となります。身柄事件では、次の流れで手続きが進みます。
逮捕
送検(逮捕から48時間以内)
勾留請求(送検を受けてから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内)
起訴前勾留(最長20日間)
起訴・不起訴(不起訴なら釈放)
起訴後勾留(保釈請求ができる)
公判手続き(刑事裁判)
判決の確定・刑の執行
身柄事件の大きな特徴は、起訴前の刑事手続きが迅速に進行することです。ほとんどの場合、逮捕後23日以内に起訴・不起訴の判断が行われます。
7-2. 逮捕されなかった場合(在宅事件)の流れ
被疑者を逮捕・勾留せず、在宅のまま捜査を進める場合は「在宅事件」となります。在宅事件の場合、次の流れで手続きが進行します。
警察官による任意の取り調べ
書類送検
検察官による任意の取り調べ
起訴・不起訴
公判手続き(刑事裁判)
判決の確定・刑の執行
在宅事件では、身柄事件のような厳格な時間制限が適用されません。起訴・不起訴の判断がなされる時期も事案によって異なります。被疑者は普段どおりに生活しつつ、何度か警察署や検察庁に呼ばれて取り調べを受けます。起訴された場合は裁判所で公判手続きが行われますが、自宅から裁判所へ通うことになります。
8. 出頭する際の注意点|不利になるのを防ぐためのポイントは?
警察署へ出頭する際には、その後の刑事手続きに向けて次の準備を整えておきましょう。
8-1. 取り調べへの対応方針をあらかじめ決めておく
警察署へ出頭すると、その場で取り調べが行われます。取り調べで話した内容は、刑事裁判の証拠として用いられることがあるので、慎重に発言しなければなりません。
できれば出頭前の段階で、取り調べで何を聞かれそうか、どのように答えるのかなどのシミュレーションを行い、対応方針を決めておくことが望ましいです。
8-2. 家族に出頭する旨を伝えておく
犯罪の内容などによっては、出頭するとその場で逮捕されるケースもあります。
何も告げないまま逮捕されて帰ってこないと、家族は心配してしまいます。逮捕の可能性を念頭に置いて、出頭する際には事前に家族へ伝えておきましょう。弁護士の目星が付いている場合は、弁護士の名前や連絡先を家族に伝えておくことをおすすめします。
8-3. 事前に弁護士へ相談する
警察署へ出頭する前には、あらかじめ弁護士へ相談しておくと安心です。弁護士に相談・依頼するメリットは、次の項目で解説します。
9. 出頭する際に弁護士に相談・依頼するメリット
警察署へ出頭しようとする人が、事前に弁護士へ相談・依頼することには、主に次のメリットがあります。出頭後の刑事手続きに備えるためにも、できるだけ事前に弁護士へ相談してください。
9-1. 不起訴に向けた弁護活動を依頼できる|被害者との示談交渉など
罪を犯したことが事実であっても、必ず起訴されるとは限りません。比較的軽微な犯罪であれば、社会の中で更生を促すのが適切だと検察官が判断し、起訴猶予(不起訴)となることもあります。
起訴猶予になるには、反省して更生への意思を示すことや、被害者と示談して被害弁償を行うことなどが大切です。特に被害者との示談は、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な考慮要素となります。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉を含めて、不起訴に向けた弁護活動を幅広く行ってもらえます。刑罰や前科を避けたいなら、出頭する前に弁護士へ相談しましょう。
9-2. 取り調べに臨む際の心構えや注意点のアドバイスを受けられる
出頭後の取り調べでは、警察官からさまざまな事項について質問を受けます。黙秘権があることや、話した内容が刑事裁判でどのように影響するのかを正しく理解していなければ、不用意な供述をして不利な立場に追い込まれてしまいかねません。
事前に弁護士へ相談すれば、取り調べに臨む際の心構えや注意点などについて具体的なアドバイスをもらえます。弁護士のアドバイスを念頭に置いて取り調べに臨めば、不本意な供述をしてしまうリスクを防げます。
9-3. 逮捕された場合は、家族との窓口になってもらえる
出頭後に逮捕された場合、家族がすぐに被疑者本人と面会することはできません。逮捕から勾留に移行するまでの3日間程度は、被疑者と会えるのは弁護士だけです。
勾留への移行後は、原則として家族も面会できるようになりますが、1日1回・15分程度の時間制限が設けられます。また、家族の面会には必ず警察官が立ち会うので、秘密の話をすることはできません。
これに対して弁護士は、いつでも被疑者と時間制限なく接見(面会)することができます(=接見交通権)。警察官も弁護士の接見には立ち会わないため、警察に聞かれたくない話もできます。
接見交通権を有する弁護士は、被疑者と家族を繋ぐ窓口として適任です。出頭したその場で逮捕される可能性を想定して、事前に弁護士へ相談することをおすすめします。
9-4. 精神的負担が軽減される
警察署へ出頭する際には、「取り調べで何を聞かれるのか」「逮捕されるのではないか」など、大きな不安を感じるかもしれません。そんなときは、弁護士に相談してください。刑事手続きの流れや見通し、注意すべきポイントなどについて具体的なアドバイスを受けられます。
正式に弁護士へ依頼すれば、出頭に同行してもらうこともできます。弁護士の同行によって心細さが緩和され、精神的な負担が軽減されるでしょう。
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10. 出頭についてよくある質問
Q. 出頭時に必要な持ち物は?服装はスーツがよい?
運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を1点、必ず持参してください。その他は基本的に普段どおりの持ち物でよいですが、逮捕されると携帯電話などは回収されます(釈放時に返却されます)。回収されたら困るものは持っていかない方がよいでしょう。留置場内では物を買うことができるので、現金をいくらか持参することをおすすめします。
なお、出頭時の服装は自由です。清潔な印象を与えるものであれば、スーツでなくても問題ありません。
Q. 警察の出頭要請は、複数回行われることもある?
数日に分けて取り調べを行う場合は、複数回にわたって出頭要請が行われます。
Q. 容疑を否認するときも出頭すべき?
事案によって異なります。弁護士と相談したうえで、出頭した方がいいかどうかを判断してください。
Q. 出頭したことは、家族や会社にバレる?
逮捕されなければ、家族や会社に知られずに済ませることもできるでしょう。しかし、万が一逮捕されると迷惑がかかるので、少なくとも家族には事前に伝えることをおすすめします。
Q. 出頭後に逮捕されるかどうかは、どのような基準で決まる?
犯罪の内容や重大性、罪証隠滅や逃亡のおそれの有無・程度などが考慮されます。
11. まとめ 出頭する前に弁護士に相談するのがおすすめ
警察署へ出頭する際には、その後の取り調べや逮捕などを想定した事前準備が大切です。出頭要請は任意ですが、対応を誤ると逮捕などにつながる可能性もあるため、早めに弁護士へ相談し、適切な対応を検討しましょう。
起訴や重い刑罰を回避するためには、弁護士による充実した弁護活動が重要になります。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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