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1. 「わいせつ」とは?
まず「わいせつ」とは何かについて、刑法上の定義などを確認しましょう。
1-1. 法律上の定義と判断基準|どこからが「わいせつ」?
「わいせつ」の定義は、問題となる罪名によって異なります。
【公然わいせつ罪・わいせつ物頒布等罪の「わいせつ」】
いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥(しゅうち)心を害し、善良な性的道義観念に反するもの
たとえば、性的なもの(画像・動画・身体の一部など)を見せびらかすような行為を指します。
【不同意わいせつ罪・監護者わいせつ罪等の「わいせつな行為」】
性的な意味を有する行為(本人の性的羞恥心の対象となる行為)
たとえば、被害者の身体に触れたり、性的な写真を撮ったりする行為を指します。
いずれも「わいせつ」であるかどうかは、普通人(一般人)の感受性を基準に判断されます。
1-2. 「わいせつ」に当たる行為の具体例
「わいせつ」に当たる行為としては、主に次のようなものが挙げられます。
【公然わいせつ罪・わいせつ物頒布等罪の「わいせつ」】
・乳房や陰部などの性的な身体部位を露出する
・裸で街中をうろつく
・性的なイラストや動画をインターネット上に公開する
【不同意わいせつ罪・監護者わいせつ罪等の「わいせつな行為」】
・乳房や陰部など身体の一部に、性的な意図や方法で触れる
・キスをする
・自分の陰部を触らせる
・裸にして写真を撮影する
1-3. 「わいせつ」と「みだらな行為」の違い
自治体の青少年保護条例などでは、「みだらな(性交、性交類似行為)」という表現が用いられることがあります。
自治体によって異なりますが、一般的に青少年保護条例における「みだらな」とは、青少年(=18歳未満の者)の心身の未成熟に乗じること、あるいは青少年を自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないことを意味します。
仮に青少年の同意があったとしても、婚約またはそれに準ずる真摯(しんし)な交際関係が認められない場合は、みだらな性交・性交類似行為として処罰される可能性があります。
不同意わいせつ罪などにおける「わいせつ」と、青少年保護条例における「みだらな(性交、性交類似行為)」の意味には差があります。そのため、青少年保護条例違反には当たるものの、不同意わいせつ罪は成立しないといったケースもあり得ます。
1-4. 「わいせつ」と「性交等」の違い
刑法では、相手の同意を得ずにわいせつな行為をした者を「不同意わいせつ罪」で処罰する一方で、相手の同意を得ずに性交等をした者は「不同意性交等罪」で処罰すると定めています。
「性交等」とは、次のいずれかに当たる行為をいいます。
性交(性器同士の挿入)
肛門性交
口腔性交
膣または肛門に身体の一部(陰茎を除く)または物を挿入する行為であって、わいせつなもの
不同意性交等罪は、不同意わいせつ罪の特別類型に当たります。性交等も「わいせつな行為」ではありますが、法条競合によって不同意わいせつ罪は成立せず、不同意性交等罪によって処罰されることになります。
1-5. 【2023年刑法改正】同意のない「わいせつ」な行為は幅広く処罰の対象に
2023年7月13日に改正刑法が施行され、従来の「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」を統合した「不同意わいせつ罪」が新設されました。
詳しくは「2-3. 不同意わいせつ罪」で解説しますが、現行の不同意わいせつ罪では、相手の同意なくわいせつな行為をした者を幅広く処罰の対象としています。相手に対して性的な行為をする際には、明確に相手の同意を得ておくことが大切です。
2. わいせつ行為等について成立し得る犯罪と罰則
「わいせつ」に当たる行為をした場合は、次に挙げる犯罪によって処罰されることがあります。
公然わいせつ罪
わいせつ物頒布等罪
不同意わいせつ罪
不同意性交等罪
監護者わいせつ罪・監護者性交等罪
不同意わいせつ等致死傷罪
16歳未満の者に対する面会要求等罪
児童買春・児童ポルノ禁止法違反
2-1. 公然わいせつ罪
「公然わいせつ罪」は、公然とわいせつな行為をした者に成立する犯罪です(刑法174条)。法定刑は「6カ月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められています。
たとえば、人目に付く屋外で性器を露出したり、裸になったり、性行為をしたりすることは公然わいせつ罪に当たります。
2-2. わいせつ物頒布等罪
「わいせつ物頒布等罪」は、わいせつな文書・図画・電子データの記録媒体などを頒布し、または公然と陳列した者に成立する犯罪です(刑法175条)。法定刑は「2年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金もしくは科料」と定められています。拘禁刑と罰金は併科されることもあります。
たとえば、性器が修正されていない画像を掲載した書籍を販売したり、そのデータをインターネット上で配信したりすることはわいせつ物頒布等罪に当たります。
なお、実際に頒布や公然陳列をしていなかったとしても、有償で頒布する目的がある場合には、わいせつな文書・図画・電子データの記録媒体などを所持し、またはわいせつな電子データを保管するだけでわいせつ物頒布等罪が成立します。
2-3. 不同意わいせつ罪
「不同意わいせつ罪」は、被害者が不同意の意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした者に成立する犯罪です(刑法176条)。法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」とされています。
具体的には、次に挙げる行為により、または次に挙げる被害者の状態に乗じてわいせつな行為をした場合は、不同意わいせつ罪が成立します。
【不同意を困難にさせる行為】
・暴行、脅迫
・心身の障害を生じさせること
・アルコールまたは薬物を摂取させること
・睡眠など、意識が明瞭でない状態にさせること
・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、または驚愕(きょうがく)させること
・虐待に起因する心理的反応を生じさせること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること
・その他、上記に類する行為
【不同意が困難である被害者の状態】
・暴行、脅迫を受けたこと
・心身の障害があること
・アルコールまたは薬物の影響があること
・睡眠など、意識が明瞭でない状態にあること
・同意しない意思を形成、表明、全うするいとまがないこと
・予想と異なる事態に直面させて恐怖し、または驚愕していること
・虐待に起因する心理的反応があること
・経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること
・その他、上記に類する事由
行為がわいせつなものでないと相手に誤信させ、もしくは相手の人違いをさせ(例:暗闇で恋人だと偽る)、または相手の誤信や人違いに乗じてわいせつな行為をした場合も、不同意わいせつ罪が成立します。
また相手が16歳未満の場合は、わいせつな行為をすることについて相手が同意していても、不同意わいせつ罪が成立します。ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、5歳以上年長の者が行為者である場合に限ります。年齢差が5歳未満の場合は、通常の不同意わいせつ罪の要件が適用されます。
2-4. 不同意性交等罪
「不同意性交等罪」は、不同意わいせつ罪の規定に掲げられている行為または事由により、被害者が不同意の意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態にあることに乗じて性交等をした者に成立する犯罪です(刑法177条)。法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」とされています。
行為がわいせつなものでないと相手に誤信させ、もしくは相手の人違いをさせ(例:暗闇で恋人だと偽る)、または相手の誤信や人違いに乗じて性交等をした場合も、不同意性交等罪が成立します。
また相手が16歳未満の場合は、性交等をすることについて相手が同意していても、不同意性交等罪が成立します。ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、5歳以上年長の者が行為者である場合に限ります。年齢差が5歳未満の場合は、通常の不同意性交等罪の要件が適用されます。
2-5. 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪
「監護者わいせつ罪」は、18歳未満の者に対し、監護者(生活を共にし、身の回りの世話をする者)としての影響力に乗じてわいせつな行為をした者に成立する犯罪です(刑法179条1項)。法定刑は「6カ月以上10年以下の拘禁刑」と定められています。
「監護者性交等罪」は、18歳未満の者に対し、監護者としての影響力に乗じて性交等をした者に成立する犯罪です(刑法179条2項)。法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」と定められています。
2-6. 不同意わいせつ等致死傷罪
「不同意わいせつ等致死傷罪」は、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪・監護者わいせつ罪・監護者性交等罪またはこれらの罪の未遂罪を犯し、その結果として人を死傷させた場合に成立する犯罪です(刑法181条)。
不同意わいせつ致死傷罪・監護者わいせつ致死傷罪の法定刑は「無期または3年以上の拘禁刑」です。不同意性交等致死傷罪・監護者性交等致死傷罪の法定刑は「無期または6年以上の拘禁刑」です。
2-7. 16歳未満の者に対する面会要求等罪
「16歳未満の者に対する面会要求等罪」は、16歳未満の者に対し、次のいずれかに当たる者に成立する犯罪です(刑法182条)。ただし、被害者が13歳以上16歳未満である場合は、行為者が被害者より5歳以上年長である場合に限ります。
(a)わいせつの目的で、次のいずれかの行為をした者
・威迫し、偽計を用いまたは誘惑して面会を要求すること
・拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること
・金銭その他の利益を供与し、またはその申込み若しくは約束をして面会を要求すること
※法定刑は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」、ただし実際にわいせつの目的で面会した場合は「2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」
(b)次のいずれかの行為を要求した者
・性交、肛門性交または口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること
・上記のほか、わいせつな姿態をとってその映像を送信すること
※法定刑は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」
2-8. 児童買春・児童ポルノ禁止法違反
次のいずれかに当たる行為などをした者は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反として処罰されます。
(a)児童買春
児童(=18歳未満の者)やその保護者などに対して対償を供与し、またはその約束をして、当該児童に対して次のいずれかの行為をすること。
・性交
・性交類似行為
・自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器、肛門または乳首を触る
・自己の性的好奇心を満たす目的で、児童に自己の性器、肛門または乳首を触らせる
※法定刑は「5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」
(b)児童ポルノの所持
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性的な姿態が映された写真や電子データの記録媒体など(=児童ポルノ)を所持すること。
※法定刑は「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」
(c)児童ポルノの提供
児童ポルノを提供すること。
※法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」、ただし不特定多数の者に対する提供の場合は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」
(d)児童ポルノの公然陳列
児童ポルノを公然と陳列すること。
※法定刑は「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」
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3. わいせつ行為をしたら、逮捕される可能性はある? 逮捕されたらどうなる?
わいせつな行為をすると、警察官に逮捕される可能性があります。特に不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は重大な犯罪なので、逮捕される可能性が十分あると考えられます。
警察官に逮捕されると、被疑者は留置場で身柄を拘束され、警察官や検察官の取り調べを受けます。多くの場合、逮捕後23日以内に検察官が起訴・不起訴の判断を行います。起訴された場合は、刑事裁判で有罪・無罪と量刑が審理されます。
有罪判決が確定し、執行猶予が付されない場合は、刑が執行されます。不同意わいせつ罪や不同意性交等罪については、初犯でも実刑判決となる可能性が高いため注意が必要です。
4. わいせつ行為の加害者にならないためのポイント
わいせつ行為を理由に刑事責任を問われないようにするためには、他人に対して不用意に性的な接触や言動をしないよう注意することが大切です。
相手の身体を触ったり、性交をしたりする際には、事前に明確な同意を得るようにしましょう。安全を期すなら、同意書を取り交わしたり、同意する旨を録音や録画によって記録したりする方法も考えられます。
5. わいせつ行為の被害に遭わないためのポイント
わいせつ行為の被害に遭わないためには、人通りの少ない場所や密室で他人と接触することは避けた方がよいでしょう。特にまだ会って間もない相手に対しては、不用意な接触を避けましょう。相手の自宅やホテルなどに誘われても、安易に行ってはいけません。
また、SNSやマッチングアプリで性的な画像を送るよう求められても、応じてはなりません。インターネット上で拡散されるなど、予期せぬ被害を受けるおそれがあるので十分注意してください。
6. わいせつ行為の加害者になった場合の対処法
他人に対してわいせつな行為をしてしまったら、速やかに次の対応を検討してください。
6-1. 速やかに弁護士へ相談・依頼する
わいせつな行為の内容にもよりますが、逮捕や起訴の可能性があるので、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、刑事手続きの流れや取り調べを受ける際の注意点などをアドバイスしてもらえます。不安が軽減されるとともに、取り調べにおいて不用意な供述をしてしまうリスクも防げます。
正式に弁護士へ依頼すれば、早期の身柄解放や不起訴に向けた弁護活動を行ってもらえます。重い刑事処分を避けたいなら、できるだけ早く弁護士に相談することが大切です。
6-2. 被害者との示談交渉を試みる|起訴を回避するためにも重要
性犯罪については、被害者との示談が成立しているかどうかが、起訴・不起訴や量刑の判断に大きく影響します。
被害者の連絡先は、被害者が同意することを条件に、警察官から教えてもらえることがあります。連絡先を得られたら、弁護士を通じて被害者と連絡をとり、示談交渉を試みましょう。
6-3. カウンセリングなどの治療を受ける
性犯罪は依存性が高く、再犯率が高いことが知られています。再び性犯罪を繰り返さないよう、医療機関でカウンセリングなどの治療を受けることも検討しましょう。
7. わいせつ行為の被害者になった場合の対処法
同意していないのに他人からわいせつな行為を受けたときは、次の方法で対処してください。
7-1. わいせつ行為の証拠を保存する|メッセージや通話録音など
性的な内容のメッセージや通話の録音など、わいせつな行為を受けた事実をうかがわせる記録が残っている場合は、証拠として保存しておきましょう。被害届や告訴状の提出、慰謝料請求などを行う際の証拠として役立ちます。
7-2. 警察に被害届や告訴状を提出する
わいせつ行為をした相手の処罰を希望するなら、警察署に行って被害届や告訴状を提出しましょう。その際、わいせつな行為を受けた事実を示す証拠を提出すると、スムーズに受理してもらいやすくなります。
7-3. 加害者に対して慰謝料を請求する
わいせつな行為を受けた被害者は、加害者に対して慰謝料を請求できます。不本意に身体を触られた場合は50~150万円程度、性交等をされた場合は200~300万円程度の慰謝料が認められるケースが多いです。
慰謝料請求に当たっては、まず内容証明郵便で請求書を送付して示談交渉を行うのが一般的です。示談交渉がまとまらないときは、裁判所に対する訴訟提起も検討しましょう。
7-4. 弁護士に相談して、対応の方向性を決める
被害届や告訴状の提出、慰謝料の請求などについては、弁護士に相談すればサポートを受けられます。加害者の責任を追及するために必要な準備は何か、どのような手順で対応するのかなどの見通しについて、弁護士と話し合う中で適切に定めましょう。
8. わいせつ行為についてよくある質問
Q. 軽く肩や腰に触れただけでも「わいせつ」になる?
不同意わいせつ罪における「わいせつな行為」とは、性的な意味を有する行為を指します。軽く肩や腰に触れるだけでは、通常は性的な意味を有さず「わいせつな行為」に当たらないと考えられます。
ただし、他の言動と相まって性的な意味を生じる場合は、「わいせつな行為」に当たると判断されることもあり得るので注意が必要です。
Q. 飲酒した後にわいせつ行為をした場合、犯罪は成立しない?
飲酒によって酩酊(めいてい)状態となり、責任能力を失っている状態でわいせつな行為をした場合も、飲酒をする時点で責任能力があれば、不同意わいせつ罪などが成立する可能性があります。
Q. わいせつ行為の被害届が出されたら、必ず逮捕される?書類送検だけで終わることもある?
相手が被害届を提出しても必ず逮捕されるわけではありません。在宅のまま書類送検された後、起訴されずに事件が終わることもあります。
Q. わいせつ行為をしたことを会社に知られる可能性はある?
警察から勤務先に連絡が行われることは通常ありませんが、報道やSNSなどを通じて勤務先に知られる可能性はあります。
Q. わいせつ行為の被害者に、加害者側から謝罪の連絡をしてもいい?
道義的には謝罪した方がよいと思われますが、被害者が謝罪を受け入れてくれるとは限りません。謝罪を拒否されても、しつこく連絡するのはやめましょう。弁護士を通じて謝罪する方法も検討してください。
9. まとめ わいせつ行為は重大な犯罪となる可能性があり、弁護士への早期相談が重要
公共の場で身体の性的な部位を露出した場合は「公然わいせつ罪」、同意を得ることなく他人の身体を触った場合は「不同意わいせつ罪」などによって処罰されるおそれがあります。特に不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は重大な犯罪で、逮捕・起訴される可能性が高いため注意が必要です。
わいせつな行為を理由に犯罪の責任を問われてしまったら、速やかに弁護士へ相談してください。被害者との示談交渉や検察官への働きかけなどの弁護活動を早期から始めることが、重い刑事処分の回避につながります。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)
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